エンテロウイルス71型による手足口病の流行−熊本県
(Vol.21 p 196-197)
本県においては、手足口病の定点当たりの患者数が2000年第15週まで漸次増加していたが、16週から流行の兆しが見えはじめた(図1)。その後、19週までは定点当たりの患者数は横ばい状態であったが、20週以降急激に増加し、全国平均より5週早く流行のピークを迎えた。
手足口病患者の検体搬入は表1に示したように7月末までに合計69検体あり、32検体(46%)からウイルスが分離された。ウイルス分離については、本月報Vol.21、No.6に詳しく述べたが、すべてVero細胞で分離された。分離ウイルスは、20単位のエコーウイルスプール抗血清(EP1〜6)、コクサッキーA(CA)9、CA16およびエンテロウイルス71(EV71)の抗血清を用いて中和試験を行い、27株がEV71、1株がエコー22型と同定された。ウイルスが分離された手足口病患者の主症状は、口内炎、発疹(主に水疱、まれに紅斑)であり、発熱の割合は約20%と低かった。
手足口病の流行に伴い、手足口病に起因する無菌性髄膜炎の患者数も増加した。感染症発生動向調査によると、5月の無菌性髄膜炎患者数45のうち、手足口病に関連するものは32(71%)、6月は64のうち38(59%)、7月は42のうち42(100%)であった。それらの無菌性髄膜炎患者は、発疹、口内炎、中枢神経症状として小脳失調症を伴っている症例が多く、発熱は39〜40℃と高熱であることが多かった。7月末までに咽頭ぬぐい液24検体、髄液56検体、便2検体が搬入され、11検体からウイルスが分離された(表1)。そのうちの9株が咽頭ぬぐい液から分離され、髄液からは1株しか分離できなかった。同定の結果6株(咽頭ぬぐい液5株、髄液1株)がEV71であり、残りの5株は現在同定中である。
本県においては1990、1993、1995および1997年に手足口病が流行しているが、1990年にはEV71が2株、1995年にはEV71が2株およびCA16が2株、1997年にはEV71が1株およびCA16が19株分離されている。過去においてはCA16と混合流行することが多かったが、本年はCA16は全く分離されず、EV71が流行の病因ウイルスであると推察された。
熊本県保健環境科学研究所 西村浩一 松尾 繁 田端康二 甲木和子 橋本 朗
熊本県健康福祉部健康増進課 宮本清也