手足口病患者からのエンテロウイルス71型(EV71)の分離−愛媛県
(Vol.21 p 196-196)
愛媛県における本年の手足口病の流行は、感染症発生動向調査によると、第18週頃から始まり、第27週をピーク(7人/定点/週)に、第30週以降減少に転じている。特に、今治圏域では、流行時期、規模ともに他圏域に比べ突出しており、第25週には19人/定点/週の患者届出がなされ、地域的大流行の様相を呈した(図)。この時期に当所には、手足口病の検査依頼はほとんどなかった。そのため、今治中央保健所を通じ当該地区の3小児科医院へ検体採取を依頼し、他圏域の検査定点からの検体とともに、病原ウイルスの検索を行った。
その結果、今治圏域および松山圏域の手足口病患者41名中32名(78%)からEV71が、2名からコクサッキーウイルスB5型が分離され、本年の手足口病の主原因は、EV71であることが示された(表1)。髄膜炎を併発した3症例のうち、2例(1例は糞便から、他の1例は髄液と糞便から)EV71が分離され、EV71による髄膜炎が示唆された。また、多くの医療機関から、本年の手足口病は高熱が多く重篤感が強かったとのコメントを得ている。
臨床材料別のEV71分離状況は、咽頭ぬぐい液から68%、水疱内容物・糞便から100%、髄液から33%で、全体的に分離率が高率であった(表2)。また、ウイルス分離にはFL、RD-18S、Veroの各細胞を用いたが、Vero細胞(64%)、FL細胞(52%)、RD-18S細胞(36%)の順に高い感受性を示した。
愛媛県では、従来EV71とコクサッキーウイルスA16型が個別に4〜5年の周期で手足口病の流行を繰り返してきた。EV71による手足口病は最近では1997年に流行していたため、今年のEV71の流行は予想より1〜2年早かった。この周期性の変化の要因を明らかにするため、EV71の血清疫学と流行株の抗原性変異について、今後検討する予定である。
愛媛県立衛生環境研究所 吉田紀美 近藤玲子 山下育孝 大瀬戸光明