エンテロウイルス71型の流行−滋賀県
(Vol.21 p 220-221)
滋賀県では、1997年にエンテロウイルス71型(EV71)による手足口病(HFMD)および無菌性髄膜炎(AM)の流行が観察されたが、その後EV71の流行はなく、1999年秋に、AMを伴ったHFMD患者2名から、2年ぶりに分離された。2000年に入って、EV71は5月に1名から分離されたのち、8月までに計12名から分離された。これらEV71が分離された患者の症状/臨床診断は、HFMDのみで経過したものが3名、HFMDにAMを併発したものが6名、HFMDに脳炎を併発したものが1名であった。さらにHFMDの診断はないが、発疹を認めAMを併発したものが1名、症状不明が1名であった。脳炎を併発した事例はとくに既往歴はなく、発達、発育は順調であった8カ月女児で、発熱・口腔内の発疹による発病から4日目に亡くなった。臨床診断はEV71による脳幹脳炎および神経性肺水腫であった。EV71が分離された患者の年齢分布は0歳〜10歳までであったが、4歳が4名と多かった。
ウイルス分離には咽頭ぬぐい液、髄液、糞便を用いたが、EV71が分離されたのは、糞便が1件あったほかは、すべて咽頭ぬぐい液で、髄液からは分離されなかった。ウイルスの培養には、FL、HeLa、RD-18S、Veroの各培養細胞を用いているが、EV71はすべてFL細胞で分離された。型別は感染研から分与された抗血清(BrCr)を用い、中和反応で同定された。
滋賀県における手足口病の流行:滋賀県感染症発生動向調査におけるHFMDの定点当たり患者数(患者数)は、第22週から増え始め、第28週にピーク(4.16人/定点)を示した。これを保健所管内別にみると、草津保健所管内が第25週に8.40人/定点を示して急増し、その後も5週にわたって多い状態が続き、他の管内に比べて特に多かった(図1)。当保健所管内には6カ所の定点があるが、患者数は特定の1カ所に集中していた。増加傾向が認められた第24週から減少に転じた第31週までの患者数は、その1定点だけで管内の40%を占めた。患者の多かった期間も、その後も、隣接する他の定点では患者数の著しい増加はみられなかった。
滋賀県では、今シーズンHFMD患者からコクサッキーウイルスA16型(CA16)およびEV71の2種類が分離されているが、CA16は県北部で4株分離されたのみであった。従って、滋賀県のHFMDの流行は、主としてEV71によるものであったと考えられる。
滋賀県立衛生環境センター 横田陽子 大内好美 吉田智子 辻 元宏
滋賀県草津保健所 尾本由美子 古池孝之 前田博明