Campylobacter coli による食中毒事例−金沢市
(Vol.21 p 222-223)

カンピロバクター食中毒は、全国で1995年20件、1996年65件、1997年257件、1998年553件、1999年493件と、近年急激に増加している。そのほとんどはCampylobacter jejuni によるもので、C. coli による集団食中毒は1996年3月熊本市(12名)と1997年3月浜松市(11名)で報告されているにすぎず、また、散発事例も極めて少ない。こうしたなか、2000年5月、金沢市の小学校の野外活動でC. coli による集団食中毒の発生があったのでその概要を報告する()。

概要:5月18日午前、教育委員会から保健所に「M小学校5年生約40名が腹痛や下痢で欠席した。」との連絡があり調査を開始した。患者の発生が他の学年にみられず5年生に限られていることから、5月16日〜17日に5年生だけで行われた宿泊体験学習中の飲み水および食事が原因食品として疑われた。この行事にはM小学校5年生101名と引率教諭5名および宿泊施設の職員1名の計107名が参加したが、患者は児童のみの43名(発症率40%)であった。症状は5月17日午後〜18日午後にかけて発現し、主な症状は腹痛(79%)、下痢(72%)、嘔気(61%)、発熱(44%)であった。引率教諭および2日間児童らと行動をともにした宿泊施設の職員には症状はみられなかった。

摂食状況:M小学校5年生らが利用した宿泊施設には、当日他の利用者はなかった。また、体験学習中の児童に共通する飲食物は、5月16日午後、ハイキングの帰路に飲んだ山中の2カ所の湧水、または殺菌済井戸水、宿泊施設の夕食および翌日の朝食ならびに飯盒炊飯の昼食である。児童らが飲んだ湧水は、山肌の小さな窪地から流れ出した水で、山腹を約5m流れ下った地点に竹筒を差し、水を汲みやすく、飲みやすくしてあった。また周囲には枯葉が積もり、草が繁茂し、竹筒には土が溜まり、苔が生えた状態であった。

病因物質の検索:当保健所で行った患者便、従事者便、施設のふきとり、宿泊施設の保存検食および山中の湧水、殺菌済井戸水についての食中毒原因菌検査の結果、患者便34検体中6検体からC. coli を検出した。他の検体からはC. coli は検出されなかった。

患者6名の便からSkirrow寒天培地に微好気的に発育した菌はグラム陰性のらせん状菌であり、これらの菌の生化学的性状は次のとおりであった。

好気的発育
オキシダーゼ試験
発育温度25℃
43℃
感受性試験ナリジクス酸(30μg)
セファロシン(30μg)
馬尿酸加水分解
カタラーゼ試験
以上によりC. coli と同定した。

結論:山中の湧水は原因と推定されたものの、2回実施したこの水の細菌検査で、いずれも病因物質を検出できなかった。また、児童らの行動や施設の利用状況および発症状況などからも原因食品を特定することはできず、原因食品は不明とせざるを得なかった。

金沢市保健所生活衛生課
食品衛生担当
吉田裕雪 岡部佐都瑠 喜多武久 長浦正兼 中田伸一 池田昌幸 宮本千加子
衛生検査微生物担当
小西和子 梨子村絹代 東 祥子 上野春美

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