遷延する発熱を呈し診断が困難だったブルセラ症の1例−ドイツ
(Vol. 21 p 224-225)
ババリア出身の10歳の少年が1999年11月に強度の倦怠感、頭痛、夕方にピークとなる40℃の発熱、夜間の発汗、腹部および背部痛などの症状を呈し、快方に向うことなく体重が42kgから33kgへと減少した。小児科医、家庭医はインフルエンザ様疾患、食事に関連した症状、拒食症との診断をつけた。患者は2000年1月25日になって病院に入院した。少年の父親はインターネットを検索し、発熱の症状からブルセラ症が疑わしいと判断した。検査室診断によりブルセラに対するIgMおよびIgG抗体が確認された。さらに血液培養より、Brucella melitensis biotype 3が分離され、診断が確定した。ドキシサイクリン、ゲンタマイシンの静脈内投与が行われ症状は消失した。
ドイツではブルセラ症は流行していないが、少年には1999年7月〜9月までイタリア南部のPugliaで祖父母とともに過ごした生活歴があった。イタリアを含む地中海沿岸地域にはブルセラ症があることが知られている。イタリアでも特に南部に患者が集中しており、最南部のシチリアでは1997年には人口10万当たり19人の発生率を示している。多くの感染が経口感染によって起こっていると考えられている。少年には直接動物との接触や未殺菌の乳製品の摂取はなかったが、海岸の屋台で購入したチーズの入ったパスタを食べていた。家族の発症例はなかったが、彼らが同じパスタを摂取したかどうかは分かっていない。
他の北部ヨーロッパ諸国同様、ドイツのウシにブルセラ症は存在せず、国内およびヨーロッパ規模の規約により常に監視されている。ドイツにおける近年のヒト症例は時に輸入食品によって感染している。原因菌はB. melitensisが最も多く、潜伏期は最長3カ月に及び、最も重症型となる。
(Eurosurveillance Weekly、 No.34、 2000)