空港マラリア:多くの国に持ち込まれる危険性を専門家が指摘−WHO
(Vol. 21 p 225-225)

8月発行のBulletin of the World Health Organizationによると、マラリア媒介蚊が航空機によって国境を越えて持ち込まれ、自国内に広がる危険性を懸念する国が増えている。

空港近くの住民が航空機によって運ばれてきた感染蚊に刺されることで発症するマラリアを特に「空港マラリア」と呼び、マラリア流行地滞在中に感染し、その後発症する「輸入マラリア」と区別している。

1969年〜1999年の間に、12カ国から合計87人の空港マラリア症例が報告された。最も多かったのがフランスの26例、以下ベルギー16例、英国14例と続いている。パリやブリュッセルでは比較的多くの患者が発生しているが、これは中央および西部アフリカから多くの航空機が着陸するのと関連している。少なくとも5人が死亡しており、全員が暴露歴がなく、免疫を持っていなかった。往々にして確定診断までに時間がかかり、その結果、病状が進行したり、合併症を併発したりしていた。1990年にスイスで5例の空港マラリア症例が発生したが、少なくとも1症例では確定診断に31日を要していた。

このレポートでは、空港マラリア患者では旅行歴等マラリアを疑う理由が乏しいことから通常本症を想定せず、結果として診断・治療が遅れる危険性が極めて高いことを指摘している。治療は1症例あたり2,700ドルを超えることもあり、ペルメスリンなどを用いた航空機内の定期的残留噴霧、乗客搭乗前や離陸直前のエアロゾルスプレーの併用よりもはるかに経済的負担が大きい点も指摘している。多くの国では既に到着便(昆虫媒介性感染症流行地からの便は特に)の殺虫剤噴霧を行っている。航空機の殺虫剤使用に関するWHO勧告の最新版は1998年に発行されている。

(Press Release WHO/52、 21 Aug.、 2000)

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