今シーズン(2000/01)におけるインフルエンザA/香港型の分離・第1報−広島県
(Vol. 21 p 268-268)
広島県内において、今シーズンにおける最初のインフルエンザウイルス分離例が確認されたので報告する。
患者は8歳の男児。咳嗽と発熱(40.0℃)の症状で2000年9月4日に広島県内の小児科を受診し、急性気管支炎と診断され、ウイルス検査用の検体として鼻汁が採取された。受診時に実施したRSテストパックによるRSウイルス抗原検出は陰性で、その後当センターにおいて実施したウイルス検査により、MDCK細胞でインフルエンザA/香港型ウイルスが分離された。
分離ウイルスはニワトリ赤血球およびモルモット赤血球に対する赤血球凝集(HA)性が認められ(HA価は、ニワトリ赤血球で16HA、モルモット赤血球で32HA)、国立感染症研究所ウイルス第一部呼吸器系ウイルス室から分与された感染フェレット抗血清を用いたHI試験の結果、A/Sydney/5/97(H3N2)抗血清(1999/2000シーズン用)に対してHI価 1,280を(ホモ価 1,280)、A/Panama/2007/99(H3N2)抗血清(2000/01シーズン用)に対してHI価 320(ホモ価 1,280)を示した。なお、当該患者の家族等には同様の症状を示す者はおらず、また患者および家族ともに最近の海外渡航歴はなかった。
インフルエンザウイルスのサーベイランスについては、冬季のウイルス流行期での動向に目を奪われがちであるが、非流行期を含めた通年のサーベイランスが、ウイルスの生態を明らかにするためには重要であると思われる。
広島県保健環境センター 高尾信一 島津幸枝 福田伸治 野田雅博 徳本靜代
原小児科 原 三千丸