変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の輸血による感染に対する予防措置について
(Vol. 22 p 10-11)
2000年9月末までに、英国で少なくとも84人、アイルランドで1人、フランスで3人以上が変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)に罹患している。現在までのところ、英国その他の国で、輸血によるvCJDの感染例は報告されていない。しかし、羊を用いた実験で牛海綿状脳症(BSE)の原因であるプリオンが輸血によって伝播する可能性が示されたことから、人のvCJDが輸血によって感染する可能性について関心が高まっている。
vCJDに関しては輸血による感染の可能性を否定するだけの根拠がないことから、多くの国で予防措置がとられている。それらは、英国では分画製剤のために英国産の血漿を用いることの禁止、BSE/vCJDに暴露の可能性のある者からの献血の拒否、血液製剤の貯蔵前における白血球除去、などの措置である。
しかし、それら予防的措置によって、輸血療法に支障をきたすようなことがあってはならない。輸血によるvCJD感染に対する予防措置として、感染のリスクが高い人からの献血を受けつけていない国では、血液供給量と血液製剤の安全性とを両立させるよう考えなければならない。例えば米国では、vCJD感染のリスクと血液供給量とを考慮したうえで、1980〜1996年の間に計6カ月以上英国に滞在していた者の献血を受けつけないこととしている。カナダでは最近、同時期に計6カ月以上フランスに滞在していた者も献血を受けつけない対象者に加えた。
IASR編集委員会註:日本でも、米国における取扱を参考にして、1999(平成11)年12月以降、1980(昭和55)年1月〜1996(平成8)年12月までの間に英国に通算6カ月以上の滞在歴がある者からの献血を受けつけていない。
(WHO、 WER、 75、 No.47、 377-379、 2000)