ウエストナイルウイルス(WNV)の米国東部における2000年最新状況
(Vol. 22 p 9-10)
米国東部17州では、蚊・ニワトリ定点・野鳥・感受性哺乳類(ヒトを含む)に対しWNVサーベイランスが行われ、1999年にWNVが確認されたのは4州であったが、2000年には12州およびワシントン特別区に拡大したことが確認された。
2000年1月1日〜11月15日の間に報告されたヒトのWNVによる中枢神経障害症例数は18例で、平均年齢は62歳、男性12人であった。発症日は7月20日〜9月13日までで、死亡1例、植物状態1例が報告された。
65例の馬の重症症例が確認され、それらの発症日はヒトの発症日よりも遅れていた。蚊のサーベイランスにおいては、5州470カ所でWNVが確認された。そのうちイエカが9割を占めた。合計4,139羽のWNV感染鳥の死亡が12州から報告され、そのうちカラスが最も多かった。
WNVの浸淫地域の拡大に反して、ヒトの症例は前年より減少しているが、重症神経感染症の発症率が1%未満であることを考えると、今年2,000人以上が感染した可能性がある。ヒト症例の減少は、ある程度は防疫対策の結果と説明可能かも知れないが、単なる流行規模の変動の可能性がある。米国のWNV浸淫地域は今後拡大すると考えられ、適切なサーベイランスや防疫活動が行われなければ、より大きな流行が起こる可能性がある。WNVサーベイランスの主たる目的は、感受性哺乳類におけるWNV浸淫状況を検出し、ヒトの重症例が確認される前に防疫対策を行うことである。ヒトの重症例の前には感染鳥の死亡が確認されており、鳥サーベイランスはヒトへのWNV感染を示唆する感度の高い指標であると考えられる。蚊のサーベイランスはさらに良い指標になるかも知れない。一方、馬の発症はヒトより遅れており、指標として適していないと思われる。
(CDC、 MMWR、 49、 No.46、 1044-1047、 2000)