幼稚園で発生したノーウォークウイルスによる感染性胃腸炎の流行−栃木県
(Vol.22 p 31-31)

2000年11月、本県の感染症発生動向調査の第46週(11月13日〜19日)報告で、県北の定点医療機関からの感染性胃腸炎の報告が急増し(図1)、11月15日〜22日にかけて同定点医療機関で集団発生が疑われる感染性胃腸炎患者の糞便5検体が採取された。検体は、N町のA幼稚園(園児400名)の3〜5歳の園児で、臨床症状は、嘔吐 100%(5/5)、嘔気と下痢がそれぞれ40%(2/5)、腹痛、発熱および血便がそれぞれ20%(1/5)であった。

検査は、電子顕微鏡(EM)法とPCR法を実施した。PCR法のプライマーはポリメラーゼ領域のNV35/36系とYuri22系を用いた。その結果EM法で3検体からSRSV様粒子を検出し、PCR法はYuri系プライマーで5検体が陽性になり、GI、GIIプローブ(国立公衆衛生院分与)を用いたマイクロプレートハイブリダイゼーション法によりすべてノーウォークウイルス(NV)genogroup II陽性となった(表1)。

このことから、12月11日より管轄保健所はA幼稚園、定点医療機関の聞き取り調査および地域流行把握のため、A幼稚園近辺の小学校児童の欠席状況調査を行った。調査の結果、A幼稚園では11月中旬に40〜50名(最高82名)の園児が連日欠席していた(図2)。主な症状として嘔吐、下痢、発熱等が認められた(12月の調査時点では20名程度の欠席で、ほとんどが咳とのどの痛みを主訴とし、嘔吐、下痢による欠席者はいなかった。定点医療機関では、この時点のA幼稚園園児の受診はほとんどなくなっていた)。小学校児童の欠席状況調査の結果、11月から調査時までの急性胃腸炎によると思われる欠席者は、1日当たり1〜14名(欠席率0.1〜1.7%)であったので、保健所は感染症予防のためのリーフレットを配付し衛生教育を実施した。A幼稚園では給食を提供していたが、給食従事者を含む職員の健康状態は良好で(食材および職員の便検査は未実施)、患者の発生期間が長期にわたったことを考慮すると、給食による発生と考えるより、地域流行による幼稚園での感染性胃腸炎の流行と推察された。

栃木県保健環境センター
内藤秀樹 岡本その子 中井定子 新堀精一 長竹一雄
栃木県県北健康福祉センター 千野根純子 伊沢真一

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