Salmonella Enteritidisファージ型18による食中毒事例−長野県
(Vol.22 p 36-36)

2000年10月13日、長野市内の医療機関より食中毒様症状を呈する患者を診察した旨の連絡が管轄保健所に入った。同保健所で調査したところ、患者らは、10月10日長野市内の飲食店で食事をした2グループおよび個人客ら15名で、11日午前2時頃から発熱、下痢、腹痛等の食中毒様症状を呈し、医療機関の診察を受け、5名が入院した。同保健所における検査の結果、患者および調理従事者の便からSalmonella Enteritidis(SE)を検出したため、この飲食店を原因とする食中毒と断定した。

その後の調査で、食中毒様症状を呈した患者は、10月10日同店で昼食に「すき焼き丼定食」を食べた10名と「すき焼き丼」を食べた調理従事者2名、午後6時に「晩酌膳」を食べた3名であった。「晩酌膳」の中には「すき焼き卵とじ」があり、卵を入れてからの加熱が不十分であった。「すき焼き丼」、「すき焼き卵とじ」とも、あらかじめ大きなボールに多数の卵を割ほぐした卵液を作っておき、それをすでに調理しておいたすき焼きに提供直前にかけ、加熱せずに出すという調理法であった。

原因物質の細菌学的検査は、加熱したすき焼き丼の具、生卵等の食材、生卵保存容器内のふきとり材料、患者および調理従事者便について実施した。その結果、15名中調理従事者1名を含む7名の便からSEが検出されたが、共通原因食材として疑われた生卵等の検食および保存容器からSEは検出されなかった。

国立感染症研究所(感染研)にファージ型別を依頼したところ、7名中6名から検出されたSEは18型、あとの1名は4型であった。ファージ型18による食中毒は、わが国における2例目の事例である。1例目の事例は、1998年8月に同じく長野市で発生している(本月報Vol.19、No.12参照)。このように、長野市内でファージ型18による集団事例が発生した原因については、現在のところ不明であるが、18型出現に特異な要因があるとすれば、SEのファージ型別はさらに重要な意味を有してくると思われる。

なお、その後、長野市内の某施設でもSEの集団食中毒が発生しており、感染研にファージ型別を依頼したところ、同じく18型であった。その因果関係は現在調査中である。

長野県衛生公害研究所 関 映子
長野県長野市保健所  赤沼益子 小野諭子 岡村雄一郎

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る