持ち帰り弁当による黄色ブドウ球菌食中毒事例−姫路市
(Vol.22 p 38-38)

2000(平成12)年10月19日、市内在住の男性から、弁当喫食後に嘔吐、下痢等の食中毒症状を呈した旨の連絡が姫路市保健所に入った。その男性は、18日20時頃に飲食店で持ち帰り弁当を購入しており、同保健所のその後の調査で、12グループ 130名中19名が同様の症状を呈していることが判明した。主な症状は、下痢84%、 腹痛74%、 嘔吐68%、 発熱15%で、平均潜伏時間は6.8時間であった。

このため当研究所は、有症者の糞便および吐物16検体、弁当を調製した飲食店の設備・調理器具のふきとり19検体、従業員の手指ふきとり12検体および糞便17検体、弁当の副食12品目、弁当の食材および保存食22検体、計98検体について依頼を受け、食中毒菌の検査を行った。

その結果、有症者糞便および吐物12検体(75%)、従業員手指ふきとり3検体(25%)従業員糞便4検体(24%)、弁当副食11品目(92%)から黄色ブドウ球菌を検出した。さらにRPLA法(SET-RPLA;デンカ生研)により、これら分離菌30検体のエンテロトキシン検査を行ったところ、エンテロトキシンA型21検体(弁当副食11、有症者糞便7、有症者吐物1、従業員手指ふきとり2)、B型4検体(有症者糞便1、従業員手指ふきとり1、従業員糞便2)、C型1検体(有症者糞便)、A+B 型1検体(有症者糞便)、陰性3検体であった。また、エンテロトキシンA型の分離菌のコアグラーゼ型別はIII 型であった。

弁当副食のほとんどから平均 3.3×108CFU/gの黄色ブドウ球菌が検出されたが、この弁当は、保健所に第一報を入れた男性が18日19時に購入し、家庭の台所に放置していたものであり、副食同士が接触していたためと考えられた。また、18日12時頃に2個購入した弁当を購入後すぐ喫食した人は無症にもかかわらず、購入後3時間以上経過してから喫食した人は症状を呈したという情報などから、原因食品は18日の昼〜19日の昼頃にかけて調製された弁当であると推定された。

保健所の調査によると、手荒れや絆創膏をした従業員がいたこと、および手指のふきとり検査の結果から、汚染要因は従業員によるものと推測された。また、原因菌の増殖要因としては、副食物を容器に詰め合わせ、室温に放置するなど、マニュアルどおりに行なわれていないことが考えられた。

以上のような状況であったが、施設および調理器具から原因菌が検出されなかったこと、弁当の食材および保存食が一部しか保存されておらず、これらから原因菌は検出されなかったこと、さらに、検出された黄色ブドウ球菌の菌数が、弁当の副食の間で有意な差がみられなかったことから、原因となる調理行程および食材を特定することはできなかった。

姫路市環境衛生研究所 川西伸也
姫路市保健所衛生課  正岡聖史

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