アフリカ旅行者へのマラリアの危険に関して−WHO
(Vol. 22 p 40-41)
WHOは、最近アフリカからの帰国者にマラリアの罹患が相次いでいることを重視して、可能な予防策に関して提言している。死亡者も出ている近年のマラリア感染は、昆虫忌避剤などを用いた蚊に刺されない対策と、適切な抗マラリア剤の予防内服によってほとんどが予防できる、とされている。特にWHOは、ドイツとスペインの旅行者がガンビアやセネガルなどにごく短期間の滞在旅行を行ったのにもかかわらず、帰国後にマラリアを発症した事例の報告を受けており、同様なケースはデンマークやスウェーデン、そして英国からも報告がある。南部アフリカでは12月〜3月まで降水量が大幅に増加しマラリアの伝播が増加することから、注意が必要である。
WHOは、ほとんどのアフリカ諸国に滞在する際にはメフロキンの予防内服(週ごと)を旅行の2〜3週以前より開始することを勧めている。メフロキンの予防内服が間に合わなかった旅行者には、代用として日々のドキシサイクリン服用を旅行の前日より開始することを勧告している。両剤は、マラリアの潜伏期間をカバーするよう、侵淫地域滞在中から帰国後4週間は服用を継続するべきである、としている。すべての抗マラリア剤には禁忌と予期できない副作用がありうるので、旅行医学の認定医や専門医療機関による処方が必要である。
マラリアの侵淫地域への旅行者は概して、ごく短期間の旅行であればマラリアの予防内服は必要ない、と考えがちであるが、実際は蚊に刺される危険がある以上、マラリア原虫の感染が起こる可能性はある。旅行者のマラリアに関するさらなる情報は、WHOのサイトより得ることができる(http://www.who.int/ith)。
旅行者には、マラリアの危険、適切なマラリア予防薬、日暮れから夜明けまでの間の昆虫忌避剤の使用や、殺虫剤処理蚊帳の使用などで自ら防御することにつき、情報を得るようアドバイスしなければならない。すべてのマラリア予防内服処方は完全とは言えず、もし旅行者が帰国後に病気になった場合には、緊急に医療機関を受診するべきである。
マラリアの最初の症状は、比較的軽く、発熱と倦怠感や感冒様症状のこともある。もし発熱が見られた場合にはマラリアを常に疑われなければならない。頭痛や筋肉痛、疲労感、嘔吐、下痢、せきはあることもないこともあり、マラリアへの曝露から1週間〜2カ月の間(まれな症例ではさらに後)には罹患の可能性がある。その場合、旅行者はただちに医療機関を受診し、マラリアに対する血液検査を求めるべきである。マラリアは適切な治療が施されれば治癒可能な疾患であるが、放置された場合には昏睡から死に至ることがあることを知っておくべきである。
(WHO、 WER、 76、 No.4、 25-27、 2000)