急性脳症と診断された1歳女児からのインフルエンザウイルスの検出−神戸市
(Vol.22 p 30-31)

神戸市内の医療機関で2000年11月21日に採取した1歳8カ月の女児の喀痰および髄液からA/香港型インフルエンザウイルスを12月13日に検出した。

患者は21日、40℃の発熱と痙攣をともなって昏睡状態に陥り、当日神戸市内の病院に運ばれ、急性脳症と診断された。その後、患者は回復したものの、運動障害、知能障害および行動障害などの後遺症が認められ、2001年1月4日の時点で入院中である。

ウイルス検査用の検体として、喀痰、髄液および便が採取され、それらの検体よりウイルス分離を実施したところ、MDCK細胞で喀痰および髄液からインフルエンザウイルスが分離された。分離したウイルスはモルモット赤血球を用いたHA試験にて喀痰由来株で64HA、髄液由来株で128HAのHA価が認められた。このウイルスを抗原として、国立感染症研究所ウイルス第一部・呼吸器系ウイルス室から分与された同定用抗血清を用いたHI試験を行ったところ、抗A/Panama/2007/99血清(ホモ価 2,560)のHI価が喀痰由来株で1,280、髄液由来株では2,560を示した。

小児を中心としたインフルエンザ脳炎、脳症は近年増加し大きな社会問題となっているが、その病態は解明されていない。今回、急性脳症と診断された患者の髄液からインフルエンザウイルスが分離されたことから、本症の発生原因を明らかにするためにウイルスの遺伝子解析を含めた詳細な検討が必要である。

神戸市環境保健研究所 奴久妻聡一 原留成和 呉 笑山 林皓三郎

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