抗エンテロウイルス71型(EV71)血清で中和されないEV71の分離・同定−大阪市
(Vol.22 p 63-64)
2000年7月に、大阪市感染症サーベイランス検査の検体からVero細胞で分離された3株のウイルスは、エンテロウイルス(EV)様の細胞変性効果を示すにもかかわらず、抗EV血清で中和されなかった。これらのウイルスの血清型を検討するために、EVのVP4 をコードする遺伝子を用いて系統解析を行った結果、これらのウイルスはEV71で、そのgenotypeはA-2であることが示唆された。
2000年7月7日に採取された11カ月齢児の咽頭ぬぐい液、2000年7月18日に採取された3カ月齢児の咽頭ぬぐい液および糞便材料を、それぞれVeroおよびRD-18S細胞に接種したところ、Vero細胞においてウイルス分離陽性となった。これらのウイルス(00-219、00-260および00-261株)について、抗EVプール血清(エンテロウイルスNT試薬「生研」およびEP95)、抗コクサッキーウイルスA群(CA)10型、 抗CA16型、抗EV71/BrCrおよび抗EV71/C7血清を用いてウイルス中和試験を行ったが、いずれも試験は不成立であった(表)。
石古らの報告(臨床とウイルス、27: 283-293、1999)による3種のプライマー(EVP2、 EVP4およびOL68-1)を用いて、過去6年間に当所で分離され、抗血清で同定された21血清型のEVとともに、そのVP4をコードする遺伝子をダイレクト・シークエンスで決定し、GenBankから入手した他の8血清型のEVのものを加えて、N-J法による系統解析を行った結果、00-219、 00-260および00-261株はEV71に最も近縁であることが明らかとなった(図)。このうち、00-219株のVP4遺伝子の塩基配列は、当所で分離され、抗EV71/BrCr血清で中和されたEV71(00-168株)と同一であった。
上記3株と、1996年以降に当所で分離され、抗EV71血清で中和された8株のEV71(96-32、 99-Ikeda、 00-78、 00-80、 00-96、 00-114、 00-125および00-168株)およびGenBankから入手した18株のEV71(BrCr、 MS/7423/87、 KED005、 KED60、 SK026、 SK036、 13/Sin/98、 E1387、 HO106/98、 NCKU9822、 Tainan/6092/98、 TW/2086/98、 TW/2272/98、 1425a/98/tw、 5142/98、 Epsom/10620/99、 Epsom/815/99およびSHZH9株)のVP4をコードする遺伝子を用いた同様の系統解析を行った結果、00-219、 00-260および00-261株はgenotype A-2に分類された。また、当所で分離され、抗EV71血清で中和された他の8株のEV71は、99-Ikeda株のみがgenotype Bに分類され、本年度中に分離された6株を含むその他の株は、00-219、 00-260および00-261株と同様にgenotype A-2に分類された。
以上の結果から、当所で分離された00-219、00-260および00-261株は、抗EV71/BrCrおよび抗EV71/C7血清では中和されないEV71で、そのgenotypeはA-2に分類されることが示唆された。
大阪市立環境科学研究所
久保英幸 入谷展弘 勢戸祥介 村上 司 春木孝祐