注射による薬物常用者(IDU)の感染症、1997〜2000年−ノルウェー
(Vol. 22 p 67-68)
ノルウェー感染症サーベイランスシステム(MSIS)によると、IDUにおける感染症例は過去5年増加している。1999年にはMSISの全報告の9%をIDUが占めた。これは主に、1995年以降のIDU間でのA型肝炎とB型肝炎の全国的な集団発生事例によるものと考えられる。ノルウェーにおける推定IDU数は、1990年は4,000〜5,000人であったものが1999年には10,000〜14,000人へと増加している。
IDUにおいてA型およびB型肝炎は1995年以降流行がみられたが、A型肝炎は2000年には症例数が減少した。しかし、B型肝炎はまだ高い報告数を維持している。C型肝炎報告数は毎年10数例と少ないが、これはMSISの報告が急性肝炎症状もしくは血清検査陽転に基づいているためであり、疫学調査によるとIDUの50〜80%はHCV抗体陽性であると報告されている。肝炎症例のほとんどはHIV検査を受けているが、HIV陽性報告数は年間10数例程度である(表)。IDUにおける結核の流行は報告されていない。薬物の筋肉内もしくは皮下注射に関連すると思われた炭疽(1例)や創傷性ボツリヌス症(4例)、クロストリジウム感染(1例)も報告されている。
対策としては1997年以降、注射のみならずすべての薬物常用者に対するA型およびB型肝炎ワクチン接種の無料化とその広報、多くの地方における清潔な注射器などの器具配布、マスメディアや社会活動を通じた教育が行われた。
(Eurosurveillance Weekly、 No.1、 2001)