今シーズン前期におけるノーウォーク様ウイルス検出状況−岩手県
(Vol.22 p 61-61)
ノーウォーク様ウイルス(NLV)による急性胃腸炎は毎年冬季に多く発生する。今シーズン前期における小児の散発性胃腸炎症例からのNLV検出状況について紹介する。
検査は、小児科定点である一関市内のA医院を受診した感染性胃腸炎の小児を対象とし、次の方法によりNLVの検出を行った。糞便の電顕試料の一部からグアニジン・塩化セシウム超遠心法によりRNAを抽出し、AndoらのG-1、 G-2プライマー(J. Clin. Microbiol. 33, 1995)を用いてRT-PCRを行った。電気泳動により目的とするバンドが認められたものはダイレクト・シークエンス法により塩基配列を決定し、遺伝子解析を行った。
表に2000年10月〜12月までの期間の検出状況を示した。NLVは10月には検出されず、今シーズン最初の検出は11月18日採取の症例からであった。その後、検出率、検出数とも増加し、11月18日以降に採取された58症例中40症例(69%)からNLVが検出された。NLV陽性症例のうち4症例からは2種類の遺伝子型のNLVが同時に検出されたため、検出株数は44株で、その遺伝子型別は10株が遺伝子型1(GI)、34株が遺伝子型2(GII)であった。
塩基配列から系統樹を作成したところ、GIの株は1つのクラスターになり、GIIの株は23株、9株、2株から成る3つのクラスターに分かれた。これまでの調査において示唆されていたと同様に、今回の結果からも、市中では塩基配列の異なる複数の株が同時に流行していることが確認された。
岩手県衛生研究所
齋藤幸一 佐藤 卓 熊谷 学 田頭 滋 菅原喜弘 小林良雄 宇佐美 智
岩手医科大学 堤 玲子 佐藤成大