集団かぜからのインフルエンザウイルスA/ソ連型の分離−島根県
(Vol.22 p 60-60)
2001年1月19日、浜田市内の小学校(児童数 266名、 13学級)の4年生1学級でインフルエンザ様疾患集団発生による学級閉鎖が行われるとの県内初発報告があり、管轄保健所が調査したところ、クラス22名中12名が発症し、うち11名が欠席した。主要症状は発熱(37℃〜39℃)、頭痛、鼻汁、咳、関節痛であった。
患者8名(いずれも今シーズンのワクチン未接種)についてうがい液を採取し、MDCK細胞を用いてウイルス分離を実施したところ、6名からインフルエンザウイルスA/ソ連型(AH1)が分離された。
これらのウイルス株は、モルモット赤血球に対してHA価 16〜48を示し、国立感染症研究所から分与のあった2000/01シーズン用検査キットの抗血清を用いたHI試験の結果、 A/New Caledonia/20/99(H1N1)に対しHI価 160(ホモ価 160)、 A/Moscow/13/98(H1N1)に対しHI価10(ホモ価80)、 A/Panama/2007/99(H3N2)に対しHI価<10(ホモ価 160)を示した。
また、この8名の患者のうち5名については急性期・回復期のペア血清について、同検査キットによりHI抗体価の測定を行った。 A/New Caledonia/20/99(H1N1)および A/Moscow/13/98(H1N1)に対しウイルス分離陽性者では3/3名、ウイルス分離陰性者の1/2 名が4倍以上の抗体価上昇を示したが、 A/Panama/2007/99(H3N2)、 B/Yamanashi (山梨)/166/98、 およびB/Shangdong (山東)/07/97に対しては抗体価≦10と皆低く、上昇した者もいなかった。
この小学校では、昨シーズン同期に同市内でA/香港型およびA/ソ連型によるインフルエンザが同時流行した際に、全校児童の約15%が欠席し、短期間学校閉鎖の措置がとられたが、今シーズンは他学級への波及・集発は見られていない。今回の集団発生は、原因となったA/ソ連型ウイルスに対する抗体未保有児童の間を縫った小流行と推測される。
なお、今シーズンの県内でのインフルエンザ様疾患集団発生報告の始まりは、昨シーズンより1カ月以上遅く、原因ウイルスとしてA/ソ連型のほか、 B型による集団発生例の報告もあるが、1月末現在の患者数は、例年同時期の1/10〜1/20程度にとどまっている。
島根県保健環境科学研究所・感染症疫学科
穐葉優子 松田裕朋 飯塚節子 武田積代 板垣朝夫
島根県浜田健康福祉センター