小学校で発生した細菌性赤痢集団感染事例−静岡県
(Vol.22 p 84-84)
2000年10月下旬〜11月初旬にかけて、県中部の一小学校を中心に細菌性赤痢の集団感染が確認された。10月28日、一児童が細菌性赤痢と診断され、11月2日までの患者は初発患者を含めて5名となり、一小学校1年生同一クラスを中心とした集団感染事例となった。直ちに、保健所による関係場所の消毒、給食施設(検食、ふきとり材料)、使用水などの検査、全校児童・教職員・患者家族・近隣一幼稚園の園児および職員などの検便が実施された。その結果、給食施設のふきとり材料、検食、使用水などからは赤痢菌はまったく検出されなかった。一方、検便では、同小学校1年の6歳男児2名と7歳女児2名、1歳の男児(患者の弟)1名、6歳の保育園児(患者の弟)1名、33歳女性(患者の母親:保菌者)1名の7名から赤痢菌が検出され、11月15日までに計12名(患者11名、保菌者1名)から赤痢菌が検出された。その後、新たな患者や保菌者の発生はなかった。患者のほとんどは入院したが、いずれも症状は軽く、軟便、微熱、軽度の下痢が主体で、発熱、粘血便は1〜2名であった。
分離菌はいずれも、Shigella sonnei I相菌であり、それらについて薬剤感受性試験[アンピシリン(ABPC)、 ストレプトマイシン(SM)、 テトラサイクリン(TC)、 シプロフロキサシン、 カナマイシン、 セフォタキシム、 クロラムフェニコール、 スルファメトキサゾール/トリメトプリム合剤(ST)、 トリメトプリム、 ナリジクス酸、 ホスホマイシン、 ゲンタマイシンの12薬剤]を実施した結果、 ABPC、 SM、 TC、 ST、 トリメトプリムの5剤に耐性を示した。また、並行して実施したパルスフィールド・ゲル電気泳動による制限酵素(XbaI)切断パターンの比較では、1〜2本のバンド差はあるものの、いずれも類似パターンを示していることから、同一の感染源によるものであることが示唆された。
今回の事例は患者発生が限局していたが、疫学調査の結果(患者は海外渡航歴がないこと、県外で感染した可能性がないこと、検食や使用水などから赤痢菌は検出されないことなど)からは感染源、感染経路を特定することはできなかった。
最近の県内における細菌性赤痢の発生は毎年散発的に数例あるが、海外渡航者が多く、国内感染例は稀である。また、県内の集団発生事例として、1992年3月伊豆の病院における患者数7名の院内集団事例、1998年9月県西部の知的障害者更生施設における患者数延べ21名の集団感染事例がある。
今回のような国内感染による集団感染事例の発生も十分考えられることから、今後さらに感染源や感染経路の特定に努めることが重要である。
静岡県環境衛生科学研究所・微生物部
増田高志 有田世乃 川森文彦 秋山眞人