大阪市内で発生したShigella flexneri 2aによる集団赤痢事例
(Vol.22 p 84-85)

1998年5月大阪市内でShigella flexneri 2aによる集団赤痢が発生した。患者数は6月をピークに減少し、7月2日以後患者発生はなかったが、10月12日から再び患者が発生し、患者総数は192名(5月の事例54名、10月の事例138名)であった()。なお、患者の多くはホームレスであった。5月事例と10月事例の関連性、ならびに市内および近畿圏で最近分離されたS. flexneri 2a菌株と本集団事例との関連性を検討した。

1998年5月から大阪市内で発生したS. flexneri 2aの集団赤痢の分離菌株157株、および対照株として市内および近畿府県で最近に分離された11菌株(1995〜1998年:国内事例4株、輸入事例7株)、合計168株についてパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)によるDNA解析と薬剤耐性パターンを調べた。集団事例株の薬剤耐性はいずれの株もABPC、 SM、 TC、 CP、 TMPおよびST合剤耐性であった()。PFGEによるDNA解析(SfiI、 NotI、 XbaI使用)では、5月事例の3株で1〜2本のバンドに相違が見られたが、他のパターンが一致しており、いずれも同一クローン由来株と考えられた。一方、対照菌株と同一パターンを示す菌株は認められなかった。

PFGE解析と薬剤耐性パターンから10月事例は5月事例と同一菌株による再燃と考えられた。また、市内および近畿圏で最近分離された株に同一菌株は見られず、今回の集団発生との関連性はないものと考えられた。

地域事情から患者相互の接触状況や喫食状況等が明確でなく、また糞便以外の検体から赤痢菌を検出できず、感染源・感染経路の特定には至らなかった。

大阪市立環境科学研究所
長谷 篤 小笠原 準 西川禎一 北瀬照代 中村寛海 石井営次 春木孝祐
大阪市立総合医療センター 池田英治 奥山道子

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