近年東京において分離された赤痢菌の菌種・血清型と薬剤耐性
(Vol.22 p 85-86)
東京において1995〜2000年の最近6年間に分離された赤痢菌の菌種・血清型と薬剤耐性状況について紹介する。
表1に、この間分離された赤痢菌305株(新血清型菌は表2に示す)の菌種・血清型を由来別に示す。菌種別の出現頻度は、輸入事例由来株において全分離株の70%、国内事例由来株で76%を占めたShigella sonnei がいずれも最も高く、次いでS. flexneri (輸入事例由来株で20%、 国内由来株で24%)であった。また、輸入事例由来株ではS. dysenteriae とS. boydii がそれぞれ9株(4.9%)認められたが、国内事例由来株では全く検出されなかった。血清型についてみると、輸入事例由来株でのみ検出されたS. dysenteriae では7種(1、2、3、4、8、9、12)、 S. boydii では3種(2、4、18)の血清型が認められた。S. flexneri では両事例由来株ともほぼ同様の血清型が認められたが、国内事例由来株では1bおよび2a、輸入事例由来株ではそれらに加えて6、2b、3aが主要なものであった。新血清型赤痢菌の検出状況は表2に示した。S. dysenteriae 204/96とS. flexneri 89-141がそれぞれ1輸入事例より、 S. flexneri 88-893が8輸入事例と1国内事例より、 S. boydii E16553が輸入事例と国内事例それぞれ1事例より検出された。これら輸入事例の旅行先は、インドが6例、 アフリカ諸国、 エジプト、 タイ、 インドネシア、 ミャンマーがそれぞれ1例であった。
薬剤耐性試験は、クロラムフェニコール(CP)、 テトラサイクリン(TC)、 ストレプトマイシン(SM)、 カナマイシン(KM)、 アンピシリン(ABPC)、 スルファメトキサゾール/トリメトプリム合剤(ST)、 ナリジクス酸(NA)、 ホスホマイシン(FOM)、 ノルフロキサシン(NFLX)の9種薬剤についてKBディスク法で実施した。
供試薬剤別にみた耐性菌の検出頻度を表3に示す。菌種あるいは由来に関係なくSM耐性(輸入事例由来株88%、 国内事例由来株91%)、 TC耐性(輸入事例由来株84%、 国内事例由来株71%)、およびST耐性(輸入事例由来株71%、 国内事例由来株55%)が高率であった。NA耐性株は、国内事例由来株で22%とやや高率に認められたものの、輸入事例由来株では3.3%と低率であった。FOM耐性株は輸入事例由来S. sonnei において1株検出、 NFLX耐性株は国内事例由来S. flexneri 2aおいて1株検出された。
東京都立衛生研究所微生物部 松下 秀