病原大腸菌O126:H27の集団事例について−大阪市
(Vol.22 p 88-88)

2000(平成12)年12月に発生した病原大腸菌O126:H27(以下、O126)の集団事例についてその概要を報告する。

2000年12月6日午前9時30分、市内の病院医師から「11月26日に下痢、嘔吐で診察した保育園児から病原大腸菌O126を検出した。発症者は民間保育園(在籍数:園児248名、保育士3名)に通園している。」との届出が保健センターにあった。

原因究明のために、患者、調理従業者の糞便検査、調理場のふきとり検査、および保菌者検索を当研究所で実施した。なお、糞便検査は発生当初は念のために食中毒菌検査およびウイルス検査を実施し、 O126が複数検体から検出された時点から、 O126を含む病原大腸菌に絞り検査を行なった。ウイルス検査については、ロタウイルスおよび腸管アデノウイルスの抗原検査、 Norwalk-like virusesおよびアストロウイルスの遺伝子検出、 VeroおよびRD-18S細胞を用いたウイルス分離、そして電子顕微鏡検査の各方法で行った。また、食品、ふきとりについては食中毒菌検査を実施した。検査結果を表1に示した。糞便検査では職員3名、 園児2名および調理人3名についてはウイルス検査および食中毒菌検査も行なったが、原因物質は検出されなかった。残りの園児189名については病原大腸菌の検査を行ない、 47名(25%)からO126を検出した。O126以外の病原大腸菌は職員1名(血清型:O166)、調理人1名(血清型:O44)および園児30名(血清型:O1、 O18、 O63、 O28ac、 O142、 O25)から検出された。この中で、 O1は18名から、 O18は6名から、 O63は3名から分離され、 O28ac、 O142、 O25はそれぞれ1名から分離された。検食10検体、調理施設ふきとり7検体についてはいずれの検体からもO126および他の食中毒菌は検出されなかった。

分離された病原大腸菌O126:H27の病原因子および薬剤耐性を表2に示した。病原因子の検索は、腸管毒素原性大腸菌LT遺伝子、 ST遺伝子、 腸管出血性大腸菌 Stx遺伝子、 腸管侵入性大腸菌inv 遺伝子、 腸管接着性大腸菌eaeA 遺伝子、 腸管凝集接着性大腸菌凝集接着性遺伝子および腸管凝集接着性大腸菌 EAST-1遺伝子を標的遺伝子としてPCR法で検出した。また、薬剤感受性試験はアンピシリン(ABPC)、 セフォタキシム、 ゲンタマイシン、 カナマイシン、 ストレプトマイシン(SM)、 テトラサイクリン、 シプロフロキサシン、 ナリジクス酸、 スルファメトキサゾール/トリメトプリム合剤、 クロラムフェニコール、 トリメトプリム、 ホスホマイシンの12薬剤についてBBLセンシディスクを用いたKB法により行い、本菌は凝集接着性遺伝子およびEAST-1遺伝子を保持し、ABPCおよびSM耐性であることがわかった。

本事例は保育園で発生したこともあり、患者の年齢が幅広く、給食献立の種類も多く、共通食を特定できなかった。したがって、感染源および感染経路を究明するにはいたらなかった。

大阪市立環境科学研究所
長谷 篤 小笠原 準 北瀬照代 中村寛海 和田崇之 中田 薫
入谷展弘 久保英幸  勢戸祥介 石井営次 春木孝祐

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