C型インフルエンザウイルスの血清疫学調査−広島県
(Vol.22 p 89-90)
C型インフルエンザウイルスは、1947年に急性上気道炎の患者から初めて分離された。しかし、このウイルスの自然界における疫学的な情報については、A型やB型インフルエンザウイルスに比較すると極めて少ない。我々は、広島県におけるC型インフルエンザウイルス感染の実態を把握するために、このウイルスに対する住民の抗体保有状況を調査した。
1997年に広島県内に在住する0歳〜84歳の住民、合計186名から採取した血清を対象として、C型インフルエンザウイルスに対するHI抗体価を測定した(図)。その結果、抗体価10以上を陽性と判定した場合、対象とした血清の74%(134/186)がC型インフルエンザウイルスに対してHI抗体を保有しており、その抗体価は10〜80を示した。また、5歳齢ごとの年齢群別にみた抗体保有率は、0〜4歳群を除くすべての年齢群で高かった。同様の成績が、これまでにもHommaやKajiによって報告されている。Hommaによれば、ヒトのC型インフルエンザウイルスの感染は、生後早い時期に初感染が起こり、その後、再感染を起こすことで高い抗体価が維持されると説明されている。
現在我々は、このウイルスに対するより詳しい疫学的な知見を得るために、ウイルス学的なサーベイランスを継続している。
参考文献
1)Homma M, et al.: Age distribution of the antibody to type C influenza virus. Microbiol. Immunol., 26, 639-642, 1982
2)Kaji M, et al.: Distribution of antibodies to influenza C virus. Kurume Med. J., 30, 121-123, 1983
3)Takao S, et al.: Isolation of influenza C virus during the 1999/2000-influenza season in Hiroshima Prefecture, Japan. Jpn. J. Infect. Dis., 53, 173-174, 2000
広島県保健環境センター
高尾信一 島津幸枝 福田伸治 野田雅博 徳本靜代