アデノウイルス分離状況(2000年第48週〜2001年第6週)−長野県
(Vol.22 p 89-89)
2000年第48週〜2001年第5週の間に当所において例年になく高率にアデノウイルスを分離したので報告する。
咽頭ぬぐい液等の呼吸器系検査材料を調査対象とした過去3年間および今年のアデノウイルス分離状況を週別分離率として図1に示した。1997年については53週が存在するため、49〜53週を48〜52週として示した。過去の流行においては第50週まで高い分離率を示す年が認められたが、年明けの第5週まで高率を維持したのは今年のみであった。
今季は10週間(第48週〜第5週)の検査材料104件のうち33%にあたる34件からアデノウイルスを分離・同定した。ウイルス分離にはHEp-2、Vero、FL、RD-18Sの各細胞を用い、血清型同定にはデンカ生研の中和用抗血清(20単位)を用いた。
図2に各年に分離されたアデノウイルスの血清型別および臨床診断名別の割合を示した。全定点からの検査材料が均等に収集されないなど、定点の偏りの影響があるため本県の正確な状況を示していないが、今年の血清型別分離状況は3型が83%を占め、前年の2型主流とは大きく違っている。
アデノウイルス分離陽性検体の中にはインフルエンザ様疾患と臨床診断されたものが例年多く含まれているので、分離同定および統計処理を行う際注意したい。
本県における今年のインフルエンザウイルスの初分離は2001年第6週であり、この週のアデノウイルス分離率は9.1%と際立って低下した。その後はインフルエンザウイルスの分離が目立って多くなり、定点当たりのインフルエンザ患者報告数も増加したことから、例年通りアデノウイルスは横ばい状態で推移するものと思われる。
(参考:最近のアデノウイルス月別検出状況 集計表、グラフ)
長野県衛生公害研究所 徳竹由美 荒井敏夫 宮坂たつ子 中村和幸