日本赤十字血液センターにおけるNAT(Nucleic Acids Amplification test:核酸増幅検査) の現状
(Vol.22 p 110-111)

1997年に明らかな輸血後HIV感染が報告され、輸血された血液はHIV抗体およびp24抗原が陰性であり、NATのみが陽性であったため、NATの導入が急がれた。血清学的検査のwindow period(WP)はHBV、 HCV、 HIV各々平均59日、 82日、 22日である。一方、NATのWPは平均34日、23日、11日であるので、ウイルスの種類によって10日〜2カ月短縮できることになる(表1)。

現在、日本赤十字社血液センターは安全な血液、血液製剤の供給のために、北海道、東京、京都の3カ所のセンターですべての献血血液について血清学的検査とNATを実施し、陰性の血液のみを使用することとなった。NATは血漿分画製剤の原料血漿については1997年11月から、輸血用血液の赤血球および新鮮凍結血漿については1999年7月から、血小板製剤については2000年8月から実施している。当日採血された血液は従来どおりの血清学的検査を行い、その後、夕方から夜中にかけていずれかのNAT センターに送られ、血清学的検査が陰性の検体をプール(現在は50本)した後、HBV、 HCV、 HIVについてNATを実施し、結果は翌朝までに血液センターに報告される。陽性の検体はプール前の個々の検体を再検査し、陽性検体を選び出す。その後、さらにHBV、 HCV、 HIVのいずれのウイルスによるものかを検査する。検体の抜きとりから結果までは自動化され、データのやりとりはコンピューター化されているが、24時間体制の気の遠くなるような作業である。今年は雪が多く、輸送が困難な日もあったが職員が手持ちで運ぶなどして対応したため、現場が支障を来たすほどの遅れはなかった。

献血血液は1999年7月〜2000年1月までは500本プールで214万検体が実施され、HBV 19件、HCV 8件の陽性例が見つかった。2000年2月からはプールサイズが50本に変更になった。2001年2月までに593万検体でNATが実施され、 HBVが100件、 HCVが19件、 HIVが4件、合計123件が陽性であった(表2)。

プールサイズが小さくなったことにより、より多くのNATのみが陽性の検体が確認されている。NATを始めてからの陽性例が150件あり、これらは輸血に使われずに済んだことになる。なお、2000年の献血者数は約588万人で、 HIV抗体陽性は64件、 NATのみ陽性は3件であった。内訳は男性63例、 女性4例であり、圧倒的に男性が多い。20代が28例、 30代が26例であった。関東地方が44例、 関西が10例で首都圏を中心に検出されている。なお、HBVおよびHCVの血清学的検査の陽性率はHBs抗原が約0.2%、 HBc抗体が約2.2%、 HCV抗体が約0.4%であった。

国立感染症研究所
エイズ研究センター第2室 吉原なみ子

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