Salmonella Isangi集団食中毒事例−熊本市
(Vol.22 p 117-118)
概要:2000(平成12)年8月1日、 市内の医療機関から「食中毒症状を呈している家族4名を診察した。」との旨、 市保健所に届け出があった。調査を開始したところ、 他に2家族6名の患者がいることが判明し、 これら3家族の共通食が7月30日に市内の惣菜店から購入した惣菜セットのみだったことから、 市保健所は同店が原因の集団食中毒と断定した。その後の調査で、 患者数は67名にのぼり、 その中にはこの店の他の惣菜セットや7月31日の製品を喫食した者もいた。これらの主な症状は下痢、 腹痛、 発熱(平均38.7℃)などで、 平均潜伏期間は28.5時間であった。また発病率は84%(67/80名)であった。
結果および考察:同店は、 惣菜の組み合わせによる3種類の惣菜セットを販売していた。各セットの中身は10種類前後の惣菜で、 セットによっては共通の惣菜が盛られていた。初発3家族の聞き取り調査から、 これら惣菜セットの中で、 4種類の惣菜(だし巻き卵・オムレツ・唐揚げ・照焼チキン)が原因食品として疑われた。7月30日の製品は残っておらず、 8月1日製造品の中のこれら4種類の惣菜の細菌検査を実施したところ、 4検体すべてからSalmonella Isangi(以下SI)が検出された。しかし、 調理場ふきとり・食材(鶏卵・味付け卵)からは、 SIは検出されなかった。
4検体の惣菜からSIが検出されたが、 各惣菜は丸い容器の中で仕切りはあるものの接触していたために、 容器内で汚染しあった可能性も考えられた。
一方、 患者17名・調理従事者5名の検便を実施したところ、 患者5名・調理従事者1名からSIが検出された。他に医療機関から患者便由来株6検体が持ち込まれ、 SIと同定された。
分離株16株の薬剤感受性試験をセンシディスク(BBL)を用いて実施したところ、 ほぼ同一の結果を示した。MINOは中間(I) 、 NAは中間(I) から感受性(S) 、 その他の薬剤(ABPC、 CEZ、 CTX、 CMZ、 AZT、 GM、 OFLX、 CP、 FOM、 ST)は感受性(S) であった。
また、 パルスフィールド・ゲル電気泳動法を実施したところ、 同一のパターンを示した(図1 BlnI泳動像)。
本菌による集団食中毒例は非常に珍しいことから、 食品がどのような経路で汚染を受けたのか調査を実施したが、 原因の特定は出来なかった。
本月報によればSIは、 国内において例年数株の報告はあるものの(1999年報告ではヒト由来分離株6,315株中SIは2株)、 比較的まれな血清型である。また1993〜1999年までの過去7年間、 集団食中毒の発生も報告されていない。
熊本市環境総合研究所
丸住美都里 新屋拓郎 松岡由美子 藤井幸三
熊本市保健所生活衛生課食品衛生第一係