麻疹の流行−高知県
(Vol.22 p 114-114)
高知県では2000年4月より麻疹の流行が始まり、 2001年4月現在、 依然として高い水準で患者発生が続いている(図)。この1年間の患者発生の報告数は、 1定点当たり68.4人(2000年15週〜2001年14週まで集計、 全国は15.5人)であり、 全国的にも最大規模で推移している。
この間当所には、 感染症発生動向調査定点医療機関よりウイルス分離材料として、 咽頭ぬぐい液(咽頭うがい液を含む)71、 髄液5が持ち込まれた。このうち咽頭ぬぐい液から44株の麻疹ウイルスを分離した(分離率62%)。麻疹ウイルスの分離同定にはB95a細胞を使用した。
流行初期の分離株5株について、 国立感染症研究所麻疹室に遺伝子型分類を依頼した結果、 4株はD5タイプ、 1株はD3タイプであった。D3タイプの株が分離された患者は、 東京で罹患し帰省していた女子大生であったことから、 高知県の今回の流行株はD5タイプと考えられる。
2000年5月〜12月にかけて、 定点医療機関等の協力で患者438名について調査した結果、 推定感染場所は、 保育園・学校(14%)、 家族内感染(13%)、 医療機関(7%)の順であった。
年齢別では、 好発年齢(1歳〜5歳)のみならず、 年長児、 中高生、 成人にも発生が見られている。
また、 予防接種は患者の9割が受けておらず、 受けたことのある1割(20名)のうち45%(9名)が10〜34歳であった。県下の平均予防接種率は、 他県と同様70%前後と低迷しており、 麻疹の流行は中途半端に抑制されている。今回の流行は1997年に小流行があって以来3年ぶりの流行で、 非流行期におけるワクチン非接種者および抗体減衰等による麻疹ウイルス感受性者の蓄積が大きな要因であると考えられる。
今後の流行抑制のためには、 ワクチン接種率の向上が不可欠と考えられる。
我々は今後、 県民と一体となり、 進んで予防接種を受けられる環境づくりのため努力したいと考えている。
高知県衛生研究所
千屋誠造 永安聖二 刈谷陽子 宮地洋雄
小松照子 山脇忠幸 上岡英和