スペインにおける麻疹排除(elimination)への行動計画
(Vol. 22 p 145-146)

スペインでは麻疹は全数届け出疾患である。1978年に麻疹ワクチンが導入されたが、 それ以前の年間の麻疹報告数は人口10万人当たり平均429(年間平均15万人)で、 非常に高かった。麻疹ワクチン接種率が85%を上回った1987〜1998年にかけての報告数は少なく、 特徴的だった2〜3年の流行周期が消滅、 もしくは流行の間隔が長くなった。しかし、 麻疹は引き続き晩冬〜早春にかけて報告され続けている。2000年には全体の麻疹報告数は159例(人口10万人当たり0.40)であった。

1978年、 スペインは生後9カ月児に対する麻疹ワクチン(シュワルツ株)の1回接種を予防接種スケジュールに組み込んだ。この方式は1981年にMMR(麻疹・おたふくかぜ・風疹)ワクチンを生後15カ月児に接種する方式に改められた。また、 1988〜1995年にかけて、 11歳児に対する2回目のMMRワクチン接種が段階的に導入された。1999年に血清疫学調査の結果を受けて、 2回目のMMRワクチン接種年齢が3〜6歳に引き下げられた。

このような状況のもとで、 スペインは2005年麻疹排除への活動計画を立案した。具体的な排除計画の達成項目は以下のとおりである。

 1)2000年に年齢別麻疹感受性者割合をWHO/EUROPEによって推奨されているレベルまで低下させること
 2)全世界で麻疹根絶が達成されるまで、 麻疹感受性者の割合を低く保つこと
 3)現行のサーベイランス・システムの強化
 4)麻疹サーベイランスにおける実験室診断機能の強化
 5)麻疹対策のための予防接種方針の確立

排除計画には3つの鍵がある。すなわちそれは、 疫学的活動、 実験室診断、 情報発信である。

疫学的活動:1)疑い例の定義の修正、 2)疑い例の迅速報告(24時間以内)システムの導入、 3)報告例の疫学的研究、 4)確定例との接触者についてのフォローアップおよび調査、 5)危険度の高い集団に対する適切な予防接種、 6)症例の詳細な分類

実験室診断:1)すべての疑い症例に対して実験室的診断を施行することを目標とする、 2)すべての確定例、 および麻疹感染が疑われる集団の少なくとも1例からは、 ウイルス分離のための検体を得ることを試みる。

情報発信:週報はすべての地区に配布し、 集計されたデータや、 報告例の疫学的解析データを伝える。サーベイランスのシステム解析には、 質的評価のための指標を導入する。

(Eurosurveillance Weekly No.13、 2001)

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る