チェコ共和国におけるダニ媒介性脳炎−旅行者へのアドバイス
(Vol. 22 p 146-146)
ダニ媒介性脳炎には、 中央ヨーロッパダニ媒介性脳炎とロシア春夏脳炎とがある。ダニ媒介性脳炎は中央および東ヨーロッパの多くの国々、 たとえばロシア、 オーストリア、 チェコ共和国などで流行している。チェコ共和国における報告数は1996〜1999年には年間400〜500例、 2000年には719例(人口10万人当たり7.2)と増加傾向を示している。
中央ヨーロッパダニ媒介性脳炎は潜伏期間が7〜14日で、 経過は二相性を呈する。第一相は発熱や頭痛などインフルエンザ様であり、 特徴的な所見はない。第二相は、 数日間の寛解期を経て発熱がぶり返し、 無菌性髄膜炎もしくは髄膜脳炎の症状を呈する。致死率は1〜5%で、 生存者のおよそ20%は神経学的後遺症を残す。ロシア春夏脳炎は中央ヨーロッパダニ媒介性脳炎と近縁ウイルスによって引き起こされ、 致死率は約20%、 生存者の60%が弛緩性麻痺を含む神経学的後遺症を残すなど、 より重症である。
予防対策としては、 有効性が高く安価な不活化ワクチンが用いられる。チェコ共和国などの流行地域への旅行者で、 3週間以上の滞在を予定している者や、 流行地(南部およびボヘミア西部地域)に滞在する者、 郊外を訪れる者、 もしくはキャンプを計画している者へはワクチン接種が推奨される。
(Eurosurveillance weekly、 No.13、 2001)