クリプトスポリジウムの遺伝子型別
(Vol.22 p 163-164)

国立感染症研究所ではクリプトスポリジウム感染の分子疫学的調査を目的として、 1996年以来、 国内で分離された臨床株またはウシ等の動物分離株に関する遺伝子型別解析を行っている。

これまでヒトのクリプトスポリジウム感染症は主にウシを感染源としたCryptosporidium parvum による人獣共通感染症と考えられていた。しかし、 遺伝学的解析からこれまでヒトでの感染が知られていなかった種類も感染することが明らかとなり、 確定診断あるいは動物、 環境等の汚染調査において分離株の遺伝子型別による詳細な解析が求められつつある。

これまでに臨床株として22株、 動物分離株として12株を調べた。臨床株は過去2回の国内集団感染事例(1995年平塚市、 1996年越生町)および他の散発例で、 そのほとんどはインドおよび東南アジア方面への海外旅行歴のある患者からの分離株であった。これに加え、 HIV陽性患者2名と先天性免疫不全患者1名(死亡例)からの分離株も解析した。動物分離株としては北海道および岩手県内の農場飼育の牛で、 下痢を発症した子牛からの分離株が含まれていた。いずれの分離株もC. parvum 検出用の蛍光抗体試薬(MerifluorTM、 Meridian社、 他)により陽性反応を示し、 形態学的特徴からC. parvum と同定されたものである。

遺伝子型別はCarraway等(Carraway M., et al., Infect. Immun. 65: 3958-3960, 1997)の方法に準じ、 ポリスレオニン遺伝子内約520bpを増幅後、 制限酵素Rsa Iで消化し、 アガロース電気泳動により切断パターンの解析を行った。ちなみに、 この方法によりC. parvum のウシ型およびヒト型の同定が可能である。

図1に国内分離株を調べた結果を示した。解析結果から3種類のRFLPパターンが検出され、 図1の右からウシ型、 中央がヒト型として報告されたものと一致した。左のRFLPパターンは新しいタイプであった。詳細な同定のため、 18SリボソームRNA遺伝子を部分増幅し、 その遺伝子配列を解析した。その結果、 第3の遺伝子型は鳥類を本来の宿主とするC. meleagridis であることが判明した。

遺伝子型別の結果、 患者分離の22株はウシ型3株、 ヒト型16株、 およびC. meleagridis (トリ型)3株に分類された。なお、 平塚の集団感染はウシ型、 越生の事例はヒト型が原因となっていた。渡航歴のある患者の推定感染地はインドおよび東南アジア地域が多かったが、 旅行先と遺伝子型の関係は明らかではなかった。またHIV陽性患者と先天性免疫不全患者からはいずれもヒト型が検出された。

 試料提供協力者:
  増田剛太(東京都立駒込病院感染症科)
  黒木俊郎(神奈川県衛生研究所細菌病理部)
  古屋宏二(北海道立衛生研究所生物工学室)
  板垣 匡(岩手大学農学部家畜寄生虫学教室)
  井関基弘(金沢大学医学部寄生虫学教室)

国立感染症研究所寄生動物部・原生動物室 八木田健司 泉山信司 遠藤卓郎
東海大学医学部感染症学部門 橘 裕司

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