クリプトスポリジウムとジアルジアの水道原水等からの検出状況
(Vol.22 p 164-165)

クリプトスポリジウム等の原虫による水系集団下痢症は1983年から毎年のように世界各地で報告されるようになり、 わが国においては平塚市の雑居ビル(本月報Vol.15、 No.11参照)や埼玉県越生町(本月報Vol.17、 No.9参照)のクリプトスポリジウム集団発生の事例以後、 水道水の原虫汚染が注目されるようになった。

こうした水系感染事例を受けて厚生省(当時)は1996(平成8)年に「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」を作成し、 さらに1998(平成10)年にこれを改正した。この改正では「水道に関するクリプトスポリジウムオーシストの検出のための暫定試験方法」を定めた。こうしたことにより徐々に水道水や河川水等からのクリプトスポリジウムおよびジアルジアの検出方法が普及した。クリプトスポリジウムとジアルジアは水質基準や監視項目には挙げられていないが、 自治体あるいは水道事業体によっては自主的に汚染状況の調査を行っている。厚生労働省は、 水道原水または水道(水道法の規制を受けない水道を含む)および飲用井戸等から供給される飲料水においてクリプトスポリジウム等の塩素消毒に耐性のある病原微生物の検出情報を把握した場合には、 「飲料水健康危機管理実施要領について」(平成9年4月10日付、 衛水第162号水道整備課長通知)に基づき直ちに水道課長へ報告することを求めている。1999(平成11)年4月〜2000(平成12)年6月までに厚生省(当時)に報告があった、 水道原水や水道水からのクリプトスポリジウムおよびジアルジアの検出はのとおりであった。

今回まとめたところでは、 13都府県から検出の報告があった。クリプトスポリジウムあるいはジアルジアが検出されたのはほとんどが河川表流水であるが、 一部沢水や貯水池があり、 青森県、 山形県および沖縄県では表流水を原水とする浄水からクリプトスポリジウムオーシストあるいはジアルジアシストが検出された。原水における検出数は多くは10個以内であり、 汚染が低いレベルであることが示されている。千葉県、 東京都、 神奈川県および大阪府の報告数は11〜18件と他の県と比較して多くなっている。これは汚染の度合いを反映するものではなく、 各自治体における水道事業体数と規模、 試験実施機関数、 人員配置と機器の整備状況、 さらに試験実施頻度等によるものと推測される。一方で、 これらの自治体における水道原水が常時汚染されている可能性が高いことを窺わせているのも事実である。

原虫汚染を防いで水道水の微生物学的安全性を保障するために、 水道原水等における汚染実態を把握し、 適切な浄水処理を施すことは重要なことである。自治体や水道事業体の事情により原虫検出試験方法の普及は全国で一様には行われていないが、 少なくとも糞便汚染を指標として原虫対策を講じることが望まれる。また、 下水処理場や浄化槽などの人からの排出源および家畜飼育場などの家畜からの排出源についても、 これら原虫に対する関心を持つ必要がある。

厚生労働省
「水道におけるクリプトスポリジウム等病原性微生物対策検討会」
委員長 金子光美

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