水泳プールに関連した長期に及ぶクリプトスポリジウム症集団発生、 2000年−米国・オハイオおよびネブラスカ州
(Vol. 22 p 171-171)

米国において、 水泳は2番目に好まれるスポーツであり、 年間およそ4億人がプールを利用している。2000年の夏に、 水泳プールに関連した5件のクリプトスポリジウム症の集団発生が報告された。以下は、 そのうち2つの報告の要約である。糞便汚染事故により水泳プールが汚染された場合には、 塩素消毒が無効であること、 ろ過ではオーシストを除去しきれないことなど難しい対策が求められることになる。子供プールの衛生環境の整備、 下痢症患者の施設利用制限、 免疫低下患者への注意喚起などを含めた総合的な管理の必要性が論じられている。

オハイオ州:2000年7月、 Delaware市/郡衛生部(DCCHD)は、 私設スイミングクラブに関連した数件のクリプトスポリジウム感染の知らせを受け、 オハイオ州衛生部ならびにCDCと共同で調査を行った。集団発生は6月下旬〜9月まで続いた。当該のスイミングクラブは7月28日〜8月4日まで閉鎖された。DCCHDの行った検査により、 Delaware郡とその周辺3地域の住民において下痢の罹患者 700名が特定された。提供された268件の糞便試料の70%にクリプトスポリジウムが確認された。症例対照研究調査で対象とした47名の確定患者のうち、 94%がスイミングクラブを利用していた。患者の年齢の中央値は6歳(1〜46歳)、 7日間下痢が続いた患者が最も多かった。プール内の噴水(pool sprinkler)の下に立つなど、 プール水を口にするような行為が危険因子となっていた。なお、 同水泳プールでは少なくとも5回の糞便汚染事故(うち1回は下痢便)があったことが確認されている。

ネブラスカ州:Douglas郡衛生部は、 2000年8月に集団感染との関連があった域内の水泳施設2箇所を調査した。集団発生は6月中旬に始まり、 9月に終息した。症例対照研究調査の結果、 遊泳や水しぶきを浴びたことが発病と関連していた。患者年齢の中央値は10歳(1〜77歳)、 下痢が7日間続いた患者が最も多かった。両施設の利用者の行動様式として、 しばしば複数のプール施設を利用していたこと、 水泳/ダイビング仲間の集まりをもっていたことがあげられる。調査対象となった患者のおよそ18%が、 下痢症状を呈しながら泳いだ経験があった。また、 約3分の1の者は罹患中、 あるいは症状が治まってからの2週間の間に、 プールで泳いだ経験があった。いずれの施設でも糞便汚染事故が確認されていた。

(CDC、 MMWR、 50、 No.20、 406-410、 2001)

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