水泳プールで採取された糞便からの原虫類の検出、 1999年−米国
(Vol. 22 p 171-172)

米国では1990年代に、 水泳プール等のレクリエーション施設に関連した腸管感染症の集団感染が増加している。1989年からの10年間に、 32カ所(約10,000件)で下痢症の集団感染が記録されている。なかでも、 1997〜98年にかけては10件もの集団発生があった。水泳施設の水質管理に関しては、 1998年にジョージア州のウォーターパークで起きた病原性大腸菌O157:H7の集団感染を教訓として、 糞便汚染事故処理のガイドラインが見直されている。その際、 クリプトスポリジウム汚染を前提とした管理体制が推奨されたこともあり、 通常は高濃度の塩素の投入と1日間のプール閉鎖措置がとられている。

今回の調査は原虫の汚染実態の把握を目的とし、 全米のプールを対象として1999年5月〜9月初めまでの期間に、 汚染事故で採取された有形便(47カ所、 293試料)から原虫の検出を試みた。本報告には調査結果の要約と、 糞便汚染事故の処理についての提案が記されている。

検査結果:検査手順はまず試料から抗原検出を試み、 陽性検体につき蛍光抗体法で原虫の確認を行った。その結果、 クリプトスポリジウムは検出されなかったが、 13検体(4.4%)からジアルジアが検出された。クリプトスポリジウムについては、 引き続き調査が必要である。

提案内容:水泳プールの水質管理では、 常に糞便汚染の危険性があり、 重要な感染源となる恐れがあることを前提としている。消毒剤として主に塩素系薬剤が用いられるが、 クリプトスポリジウムなどに対しては効果が期待できない場合がある。したがって、 管理状態のよいプールであっても集団感染の危険性は否定できない。今回の調査ではクリプトスポリジウムが検出されなかったことから、 塩素投入量を減ずる措置に切り替え得ることが示唆された。ちなみに、 クリプトスポリジウム、 ジアルジア、 E. coli では塩素感受性が大きく異なっており(1mg/lの塩素濃度で、 それぞれ約7日、 <1時間、 <1分)、 ジアルジアを対象とした処理が行われれば、 ウイルスや細菌類への効果が十分期待できる。

これらの結果を反映させて、 「有形便による汚染事故ではジアルジア、 下痢便ではクリプトスポリジウムによる汚染」を想定した処理方法を新たに提案した。ただし、 管理にあたっては、 水泳プールでは構造によってしばしば水の循環が滞る水域が形成されることから、 感染防止は容易でないことが示唆されている。加えて、 危険度の高い下痢便による汚染事故はむしろ察知し難く、 対応しにくこと、 管理者教育の重要性、 および利用者への正しい知識の普及などの必要性が強調されている。なお、 関連情報はインターネットで提供されている(http://www.cdc.gov/healthyswimming)。

(CDC、 MMWR、 50、 No.20、 410-412、 2001)

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