非流行期に分離されたVictoria系統のB型インフルエンザウイルス−川崎市
(Vol. 22 p 167-168)

インフルエンザ非流行期にVictoria系統のB型インフルエンザウイルスが2株分離された。患者は、 7歳5カ月と9歳11カ月の児童で、 いずれも医療機関では咽頭結膜熱と診断され、 5月28日と6月1日に咽頭ぬぐい液を採取し、 検体として搬入された。

当初は、 アデノウイルスの分離を目的としていたこと、 インフルエンザの流行終息でMDCK細胞を準備していなかったことから、 CaCo-2細胞に接種を行った。接種後4日目頃からインフルエンザ特有のCPE がみられるようになり、 その培養上清をインフルエンザ検査キットであるDirectigenTM Flu A+B(Becton Dickinson and Company;国内未発売)で検査したところ、 B型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体との反応がみられ、 発色を呈した。このことからB型インフルエンザウイルスと判断した。

分離株についてヒトO型赤血球を用いてHA価を測定し、 国立感染症研究所から分与されたB/Yamanashi(山梨)/166/98(山形系統)とB/Shangdong(山東)/07/97(Victoria系統)のフェレット感染抗血清を用いてHI試験を行った。HI試験では、 2株ともB/Shangdong/07/97(ホモ価320)に対しHI価160で、 B/Yamanashi/166/98ではHI価<10を示した。

2000/01シーズン、 川崎市では全国的な傾向と同じく、 A/ソ連型、 A/香港型およびB型が混在する流行形態であった。インフルエンザ流行時のB型はすべてB/Yamanashi/166/98の抗血清で同定され、 山形系統であった。一方、 非流行期に分離された2株は流行時とは異なる系統であった。Victoria系統のB型インフルエンザウイルスが分離された患者は、 川崎北部の同じ小学校に通学している児童であるが、 学年は異なっており、 2人の共通点は不明である。現時点では、 他の児童からの分離報告はないが、 B型インフルエンザウイルスは夏季にも分離され、 集団発生もみられることから、 今後の動向が注目される。

川崎市衛生研究所 清水英明 奥山恵子 平位芳江
池田小児科    池田 宏

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