ウズベキスタン旅行者に発生した毒素原性大腸菌およびShigella sonnei による集団下痢症−宮崎県
(Vol.22 p 194-195)

2000年10月、 宮崎発のウズベキスタン旅行ツアーに参加した502名中169名が下痢等の症状を呈し、 そのうち49名より24種類の血清型の毒素原性大腸菌(ETEC)、 および9名からShigella sonnei が検出された集団下痢症が発生したのでその概要を報告する。

ツアーは10月11〜16日、 16〜21日、 21〜26日の3班に分かれて実施され、 それぞれ155名、 169名、 178名の計502名が参加した。3班とも、 宮崎空港をチャーター便で出発し、 同日夕方ウズベキスタン共和国のブハラに到着、 その後サマルカンド、 タシケントを訪問し、 6日目の朝宮崎空港へ帰国した。

いずれのグループも出発後2〜3日目から患者が発生し始め、 4〜7日目の間にピークが見られ、 9〜10日目まで発生が続いた。患者数は、 第1班で50名、 2班で71名、 3班で48名の計169名に達した。主症状は、 水様性下痢(79%)、 腹痛(35%)、 発熱(20%)であった(表1)。

病因物質の検査は、 海外旅行ということから食中毒および感染症の両方を想定して行った。その結果、 第1班では患者のうち検査を実施した28名中13名から17株のETECを検出した。ところが、 第2班では、 患者の検査でETECのほかにS. sonnei が検出されたため、 患者の病原菌検査に加え、 無症者(希望者)についてもS. sonnei 検出を目的に検査を実施した。その結果、 患者で検査を実施した43名中14名から14株のETECを検出し、 また患者43名および無症者48名の合計91名中9名からS. sonnei を検出した(このうち1株は大阪府で検出)。第3班では、 患者のうち検査を実施した43名中22名から28株のETECを検出したが、 S. sonnei は検出されなかった。第1〜3班の結果を合計すると、 114名中49名から59株のETECを検出し(表2)、 162名中9名からS. sonnei を検出した(このうち1株は大阪府で検出。表3)。なおETEC分離株は24種類と非常に多種類の血清型に分類された(表4)。

S. sonnei が分離された9名のうち、 5名は水様性下痢、 発熱等の症状が見られたが、 他の4名は無症状であった。

原因食品および感染経路の調査については、 患者発生の時期等から旅行中の感染であると考えられたので、 第1、 2および3班の往路の機内食・軽食(サンドイッチ)および機内食製造業者従業員12名について病原菌の検索を行ったが、 ETECおよびS. sonnei は検出されなかった。

これらのことより、 今回の事例は、 旅行先のウズベキスタンで感染したものと推定され、 ウズベキスタンの衛生状況を十分に把握しないまま、 生ものや生水等を摂食したことに原因があると思われた。またETECの血清型が非常に多種類であったこと、 日時別患者発生のピークにばらつきが見られたことから、 多くの食材が汚染されていたことが考えられた。

海外旅行者が年々増加している現在、 今後もこのような事例が増加することが考えられることから、 旅行者に対するより一層の注意喚起が望まれる。

宮崎県衛生環境研究所
河野喜美子 山田 亨 齋藤信弘
宮崎市保健所衛生環境課・保健予防課
中央保健所広域指導検査課
都城保健所広域指導検査課
延岡保健所広域指導検査課

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