軽費老人ホームで発生した腸管病原性大腸菌O119:H21の食中毒事例−石川県
(Vol.22 p 195-196)

2001(平成13)年5月24日、 石川県石川郡の某老人ホームで、 入所者20名が下痢、 嘔吐等の食中毒症状を呈しているとの連絡が同施設の嘱託医より石川中央保健福祉センターにあった。調査の結果、 施設入所者168名、 職員16名の計184名のうち、 有症者は47名(入所者46名、 職員1名;発症率26%)で、 いずれも同施設で提供される食事を喫食していた。主な症状は、 下痢47名(100%)、 腹痛7名(15%)、 発熱6名(13%)、 嘔吐4名(8.5%)で、 入院した者はいなかった。

原因究明のために、 有症者ならびに調理従事者の糞便、 調理施設内のふきとりおよび保存してあった検食等について、 食中毒起因菌の検索を実施した。なお、 有症者の糞便の一部はウイルス検査も実施した。その結果、 有症者の糞便23検体中22検体、 調理従事者の糞便7検体中4検体、 調理施設内ふきとり16検体中3検体、 検食等35検体中3検体[わらびの酢の物、 お浸しの材料;ほうれん草(生)、 味噌汁の具;キャベツ、 あげ]から、 大腸菌O119:H21が検出された。なお、 その他の腸管病原菌ならびにウイルスは検出されなかった。また、 検出されたO119:H21について、 Vero毒素、 易熱性エンテロトキシンおよび耐熱性エンテロトキシンの産生試験を行ったが、 いずれも陰性であった。この結果、 当保健福祉センターは、 本事例を腸管病原性大腸菌(EPEC)O119:H21による食中毒と断定した。原因食品は、 検食等の細菌検査および喫食調査の結果から、 23日夕食のわらびの酢の物と確定した。また、 ふきとりからも本菌が分離され、 調理施設がかなり広範囲に汚染されていたと推測された。

有症者由来10株、 調理従事者(保菌者)由来3株、 ふきとり由来3株、 検食由来3株、 計19株の分離株についてパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)による遺伝子解析を行った結果、 すべてのDNA切断パターンが一致し、 これらは同一クローンの菌株であった(Xba I泳動像)。また、 分離株19株について4種類の病原性関連遺伝子(腸管付着に関与する遺伝子で作用機序の異なるeaeAaggR bfpA および耐熱性毒素様毒素(EAST1)産生遺伝子のastA )の検出を行った結果、 全株がeaeA を保有していた。

なお、 本事例で分離されたO119:H21は、 特異的なO:Hの組み合せを有するEPECであった。

石川県石川中央保健福祉センター
北西陽一 児玉洋江 谷村睦美 村本 隆 木村秋雄 川島ひろ子
石川県保健環境センター
倉本早苗 黒崎直子 尾西 一 芹川俊彦 西野久仁夫

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