夏季に入って分離されたビクトリア系統のB型インフルエンザウイルス−香川県
(Vol.22 p 198-198)
今シーズン(2000/01)、 香川県下のB型インフルエンザウイルスは、 第4週に初発分離され第17週で終息し、 この間 180株が同定され、 そのすべてがB/Yamanashi(山梨)/166/98もしくはB/Sichuan(四川)/379/99類似株で、 いわゆる山形系統であった。
それ以降になって、 第20週〜第27週までに、 ビクトリア系統のB型ウイルスが4株分離された。
症例 | 病院 | 検体採取日 | 患者 | 病 名 | 症 状 |
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1 | A | 5月14日 | 11歳・女 | 咽頭気管支炎 急性胃腸炎 | 全身倦怠感、 咳、 発熱、 頭痛、 嘔吐、 下痢、 失神、 入院 |
2 | B | 6月11日 | 12歳・女 | 扁桃炎 | 高熱、 咽頭痛、 咳、 扁桃腫大・発赤、 頸部リンパ節腫大 |
3 | B | 6月13日 | 12歳・男 | 扁桃炎 | 発熱、 咽頭痛、 咳、 咽頭発赤、 扁桃発赤・腫大、 頸部リンパ節軽度腫大 |
4 | C | 6月21日 | 12歳・男 | 気管支炎 | 発熱、 食欲不振、 全身倦怠、 咳、 咽頭発赤、 咽頭痛、 気管支炎、入院 |
いずれの症例も医療機関で気管支炎もしくは扁桃炎と診断されたもので、 患者の住所地は県中央部のS市で、 症例2〜4は同一のA中学生である。
調査はできていないが、 この期間中、 A中学ではかぜの流行があり、 また同様疾患でC病院では多くの同中学生が受診した経緯がある。
分離材料(B、 C病院から6件のA中学生の材料送付)は咽頭ぬぐい液で、 ウイルス分離はMDCK細胞、 FL細胞、 RD-18S細胞を用い、 MDCK細胞でB型ウイルスを分離した。他のウイルスは分離されなかった。
国立感染症研究所から分与されたフェレット感染抗血清を用い、 HI試験を行った。山形系統であるB/Yamanashi/166/98では<10であったが、 ビクトリア系統であるB/Shangdong(山東)/07/97(ホモ価 160)で10〜20のHI価を示した。
本県におけるB型ウイルスの流行は、 1988年以降山形系統であったが、 1996/97シーズンに分離したB型 162株のうち19株、 1998/99シーズンに分離したB型 274株のうち37株がビクトリア系統であった。
これら終息期以降、 特に夏季におけるインフルエンザウイルスの動向は、 典型的な症状を示さず、 十分に把握することは困難であるが、 呼吸器系疾患を中心とした散発症例にも注意し、 今後の動向に注目したい。
香川県衛生研究所 亀山妙子 三木一男 山西重機