つつが虫病の発生状況−宮崎県
(Vol.22 p 213-214)

当所では、 Gilliam、 Karp、 Kato、 Kawasaki、 Kuroki株を抗原とした間接蛍光抗体法を行い、 対血清で抗体価の上昇が確認された患者、 および急性期の単血清でIgG抗体価に比べて高いIgM抗体価(1:40以上)の検出された患者を血清学的確認例として把握し、 単血清で抗体陰性であるが、 血清が10病日以内に採取され、 10月〜2月に発病し、 発熱と発疹あるいは発熱と刺口が認められた患者を臨床診断例として発生状況を把握してきた。また、 IgMあるいはIgG抗体価が他の株に比べて特定の株で2倍以上高い場合には、 この特定の血清型に感染したと推定して、 血清型別の発生状況を把握してきた。

2000年度につつが虫病の疑いで検査依頼のあった患者数は141名で、 上記の基準に従った結果、 そのうち99名(血清学的確認例84名、 臨床診断例15名)がつつが虫病であった。患者は、 例年同様、 11月をピークに10月初め〜3月にかけて県の中南部を中心に発生し、 50歳以上の中高齢者が70%近くを占めていた。また、 血清学的確認例の血清型別患者数はKawasaki型59例(70%)、 Kuroki型23例(27%)、 不明2例(2.4%)で、 この構成比についても例年とほぼ同じであった。

本県でも、 患者が1980年頃から増加し始め、 1985年度には189名にまで達しているが、 最近の発生状況の平均像を知るために1991年4月〜2000年3月までの10年間の発生状況をまとめた。

 (1)推定感染地は、 県の中南部を中心とした広い地域に分散していた。
 (2) 10年間の総患者数は782名であった。1991〜1993年度では100名前後、 1994〜1997年度では50名前後、 1998年度以降は100名程度の患者が発生しており、 年度により変動するが、 1シーズンの平均患者数は80名程度であった(図1)。
 (3)総患者数782名中血清学的確認例は660名で、 1シーズンに臨床診断例が占める割合は平均15%程度であった(図1)。
 (4)血清学的確認例660名に性差は無く(男性357名、 女性302名、 不明1名)、 50歳以上の中高齢者が73%を占めていた。また、 これらの傾向はいずれのシーズンも同じであった。
 (5)血清学的確認例660名中430名(65%)がKawasaki型に、 189名(29%)がKuroki型に感染したと推定された。また、 年度により各型による患者の占める割合が若干変動するが、 いずれの年度もKawasaki型による患者が優勢であった(図2)。
 (6)血清学的確認例について見ると、 患者の56%が11月に、 31%が12月に発症していた。また、 Kawasaki型による患者の発生時期は10月〜2月であったのに比べ、 Kuroki型による患者の発生時期は9月〜4月と長い傾向がみられたが、 いずれの患者も発生のピークは11月であった(表1)。

また、 県内で採取したタテツツガムシの虫体から、 両型に特異的なモノクローナル抗体の混合液を一次抗体とした蛍光抗体法でリケッチア粒子が検出されたことから、 本県における主なベクターはタテツツガムシと推定される。

例年、 臨床診断例と血清型を推定できない例が少なからずあり、 正確な発生状況を把握する上で障害となっているが、 対血清の確保の促進、 適切な患者由来株の抗原への採用、 型別可能なPCRの併用などで対応していきたい。

宮崎県衛生環境研究所
山本正悟 元明秀成 木添和博 齋藤信弘

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