つつが虫病による死亡事例−山形県
(Vol.22 p 216-217)

2001(平成13)年4月14日山形県K市在住、 60歳代の女性がつつが虫病で死亡した。発病は4月4日で、 5日には38.9℃の発熱があった。4月11日症状が悪化したため医療機関に緊急入院となった。臨床症状は下肢、 背部、 胸腹部の発疹、 発熱(39℃前後)、 全身倦怠、 頭痛、 肝腫脹が認められた。4月14日の臨床検査成績はRBC 421.3万、 WBC 3,040、 血小板 3.1万、 GOT 566IU、 GPT 121IU、 LDH 3,200IU、 CRP 23.81mg、 尿蛋白(+)、 尿潜血(-)等であった。患者に基礎疾患は特になかったが、 陰部に刺し口が認められた。当初セファゾリンが投与されたが発熱など症状の改善がみられず、 その後ミノサイクリンに切り替えられた。4月14日DICを発症し、 同日死亡した。

4月14日に血液を採取、 衛生研究所につつが虫病の検査依頼がなされた。つつが虫病病原体に対する抗体測定は、 Kato、 Karp、 Gilliamの各株を抗原とし間接蛍光抗体法により測定した。抗体価はIgGがKato 1,280倍、 Karp 5,120倍、 Gilliam 1,280倍、 IgMがKato、 Karp 10,240倍、 Gilliam 5,120倍であった。同時に、 全血を検体としてPCRによるつつが虫病病原体遺伝子の検出を行った。全血0.5mlからDNA抽出キットWB extraction kit(WAKO)を用いDNAを抽出した。PCRはつつが虫病病原体の特異蛋白をコードしている遺伝子を標的としたFuruyaらの方法(1)により行った。その結果、 2nd PCRで目的のDNA断片が検出された。1stPCR産物を鋳型に血清型特異蛋白をコードしている遺伝子を標的とした型別PCRを実施した結果Karp型であることが確認された。以上の結果からKarp型のつつが虫病リケッチア感染であったことが判明した。

本県でのつつが虫病による死亡例は7年ぶりのものであった。また、 4月4日のつつが虫病発生は時期的に本県では1980(昭和55)年以降最も早い症例であった。今冬は雪が多かったが3月後半から気温の高い日が続き、 ツツガムシの活動が早くなったものと思われる。患者は特に山等には行っていないが、 患者宅は山麓部にある集落にあり、 3月27日頃自宅に隣接する菜園畑でツツガムシに刺されたものと思われる。今季は4月までインフルエンザの発生があったこともあり、 発病後医療機関に受診するまで時間が経ってしまい、 テトラサイクリン系の抗生物質の使用が遅くなってしまったこと等が死亡にまで至ってしまった要因と考えられる。

参考文献
(1) Furuya Y., Y.Yoshida, T.Katayama, S.Yamamoto, and A.Kawamura,Jr.: Serotype-specific amplification of Rickettsia tsutsugamushi DNA by nested polymerasechain reaction. J. Clin. Microbiol., 31, 1637-1640, (1993).

山形県衛生研究所
大谷勝実 村山尚子 早坂晃一
山形市立病院済生館
小川正見 木村 淳

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