給食当番の児童を介して集団発生したと思われるノーウォーク様ウイルスによる感染性胃腸炎−福井県
(Vol.22 p 222-222)

2001年2月2日、 腹痛、 嘔吐を主症状とする児童が福井市内のA小学校の2年生に集中していると所轄保健所から連絡があった。

この事例は2001(平成13)年2月2日に2年生全児童27名中17名(63%)が集団欠席したことで明らかになった。当初、 給食による食中毒を疑ったが、 患者発生が2年生に限られたこと、 2年生に特別な行事がなかったこと、 当時インフルエンザの流行期で風邪による胃腸炎と診断された児童が多かったこと、 などから細菌とウイルス両方の検査を依頼された。

患者から採取した咽頭うがい液17検体の培養細胞(MDCK、 CaCo-2、 RD-18S)によるウイルス分離検査はインフルエンザウイルスを含めすべて陰性であった。一方、 患者9名と給食調理従事者3名の糞便について、 ポリメラーゼ領域をターゲットとしたノーウォーク様ウイルス(NLV)検査(RT-PCR法による検査およびサザンハイブリダイゼーション法による確認)を行ったところ、 患者7名と従事者1名からgenogroup IIに属するNLVが検出された。電顕法では患者4名からSRSV様粒子が確認された。なお、 原因となりうる病原細菌は検出されなかった。

検出されたNLVの潜伏時間を考慮すると、 感染時期として最も疑われたのは1月31日の昼食時である(この時、 患者における潜伏時間は平均32時間になる)。保健所の聞き取り調査から、 1月31日に有症児童1名の登校が確認されていたため、 詳細に調査した結果、 この児童は登校時から胸がむかつく症状を呈しており、 授業2時間目に廊下で嘔吐、 その後保健室で静養(この時、 下痢を呈したと養護教員は感じていた)し、 4時間目の授業と昼食時の給食当番のため教室に戻り、 午後は早退していたことなどが明らかになった。午前と午後、 校内で2度嘔吐したが、 クラスメートとの直接接触はなかった。なお、 初発患者と集団発生患者(5名)から検出されたPCR産物について、 ダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定、 比較したところ、 ほぼ100%の相同性を示すことが明らかになった。

今回の事例は給食当番の初発児童を介した給食時の食品や食器類汚染により、 2年生児童のみが集団発生した可能性が強く示唆された。教育の一環として、 児童に当番制で直接給食を取り扱わせる小学校などにおいては、 調理従事者や食品取り扱い業者に対する衛生管理と同様、 登校時に胃腸炎症状を呈する児童には当番から外すなどの対策が必要である。なお、 この児童は1月31日に家族内感染していたことが担任の家庭訪問で明らかになった。一方、 給食従事者1名からも類似配列のNLVが検出されたが、 他の学年での患者が皆無であることや、 2年生との接触もないことから、 今回の事例に直接関与しているとは考えにくかった。

福井県衛生研究所・ウイルス研究グループ 松本和男 東方美保 有定幸法

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