尿中からの単純ヘルペスウイルス1型の分離例について
(Vol.22 p 223-223)
患児(10歳男性)は、 2001年2月19日より潜血+/- 〜1+が持続、 2月26日より排尿終末痛、 残尿感出現、 排尿時に性器の先の痛みの訴えがあるも、 発赤、 腫脹などの炎症症状は認められず、 2日ほどで消失した(このとき同部位におけるアフタなどの病変は確認されていない)。2月27日潜血2+、 沈渣にて赤血球10〜15/HPFにて出血性膀胱炎を疑い、 排尿時に分割して採尿したが、 初期尿、 後期尿で沈渣中の赤血球に差はなく(1〜5/HPF)、 形状は大小不同、 一部コンペイトウ状のものがみられた。3月1日でWBC 5,200、 Hb 8.3、 Plt 2.2万、 同日ウイルス分離のために採尿した(外陰部に特に所見は認められなかった)。尿の潜血は、 3月12日の+/-を最終として、 また沈渣中の赤血球もほとんど認められなくなった。
また4月27日、 口内炎のために咽頭ぬぐい液を採取した。さらに5月9日採尿し、 それぞれからウイルス分離を試みた。
ウイルス分離のための使用細胞は、 RD-18S、 FLを用い、 その結果、 3月1日採取の尿から単純ヘルペスウイルス(HSV)1型が分離同定された(他の分離材料は陰性であった)。
なお、 当患児には基礎疾患として神経芽細胞腫があり、 2月8日骨髄機能回復を目的に骨髄移植をおこなった。前処置としてリン酸フルダラビン、 サイクロホスファミド、 ATG (抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン)を使用し、 移植後の免疫抑制には4月18日までサイクロスポリンAを持続点滴で、 4月19日より内服で使用している。抗ウイルス薬については、 2月1日〜3月30日までアシクロビルの内服、 また2月9日〜4月19日までCMV高力価γ-glbを使用した。移植後の経過は良好で、 以降特に症状を認めず、 5月19日退院した。
HSV感染による膀胱炎(泌尿器系感染)は稀であり、 本事例も尿中から分離されたものの、 その原因とは断定できない。ただ中高年齢者や臓器移植後の患者にHSVによる泌尿器系感染がみられたとの報告もあるが、 小児には少ないようである。
香川医科大学小児科
比嘉真由美 難波正則 今井 正
香川県衛生研究所
亀山妙子 三木一男 山西重機