B群コクサッキ−ウイルス5型を原因とする無菌性髄膜炎の地域流行―奈良県
(Vol.22 p 220-221)
2001年7月末、 本県の中部に位置する非定点医療機関で無菌性髄膜炎と診断された15名中12名からB群コクサッキ−ウイルス5型(CB5)を分離(髄液8株/13例、 便8株/9例、 咽頭ぬぐい液10株/15例)した。分離細胞はHEp-2、 MA-104およびRD-18Sの3種類を用いたが、 HEp-2細胞が最も感受性が良く、 細胞変性効果は検体接種後1〜2日目で明瞭であった。中和試験はいずれの検体も良好な結果であった。
患者は11ヶ月児〜13歳児で14名が同市内に、 残り1名についても近隣に居住していた。発病日は7月15日〜23日の間に集中し(18日が最多)、 臨床症状は発熱が全例(37.5〜40.5℃)、 発熱期間は平均7.2日(5〜10日)、 嘔吐9名、 頭痛10名、 項部強直3名であった。髄液の臨床検査はリンパ球、 好中球および単球様細胞を含む総細胞数の強度増加(50〜<1000cells/μl)が14名、 リンパ球を主とする強度増加は8名が50cells/μl以上であった。また、 タンパク濃度は40mg/dl以下の正常値を示すものが12名であった。40mg/dlを超えるものは3名(81、 58、 49mg/dl)で、 うち2名からはウイルスは検出されなかった(表)。
この地域流行を除く定点医療機関からコクサッキーB5分離患者の臨床診断名は、 急性気管支炎(12)、 ヘルパンキーナ(4)、 無菌性髄膜炎(3)、 胃腸炎(3)、 肺炎、 扁桃腺炎および頚部リンパ節炎(各々1)である。
本県の感染症発生動向調査によると、 1989(平成元)年以降では1994年に同型のウイルスが無菌性髄膜炎患者から20株分離されており、 それ以来の流行である。現在、 同病院から更に31名の患者材料が搬入され検索中である。
奈良県衛生研究所・予防衛生課
北堀吉映 足立 修 田口和子 立本行江 青木喜也
済生会中和病院・小児科
松山郁子 丸橋欣之 吉澤弘行