エコーウイルス30型の増加に関連したウイルス性髄膜炎−英国
(Vol. 22 p 260-260)
ウイルス性髄膜炎は多種のウイルスが病原となり得るが、 現在の英国では症例のほとんどがエンテロウイルスによるものである。最近症例の届け出が増加しているのは、 検査室からのエコーウイルス30型(E30)の報告増加を反映している。
2001年初め〜第33週までのウイルス性髄膜炎患者届出数は477例で、 2000年および1999年の同時期までの報告それぞれ336例、 142例に比較して多くなっている(図)。イングランドとウェールズにおける患者届出の増加は、 検査室からのE30確定報告の増加と一致しており、 その数は予想を上回っている。なお、 2000年のウイルス性髄膜炎の増加は、 E13によるものであった。
2001年初め〜第34週までにイングランドとウェールズの検査室において、 E30の分離が髄膜炎患者29例を含む60件報告された。2000年の年間分離総数は18件で、 1999年の分離数は0である。感染確定例60名中48名(80%)が15歳以上の成人である。E30の増加に付随して、 型不明のエンテロウイルス202件と、 型未同定のエコーウイルス128件(含髄膜炎患者49例)が報告されている。型未同定のエコーウイルスについては、 現在のパネル抗血清(含4、 6、 9、 11、 30型)を用いた検査による同定が行われた可能性がある。さらに、 髄膜炎患者236例を含む277例のエンテロウイルス感染がPCRにより確認された。これは、 髄膜炎症例の大多数が髄液検体のRT-PCR検査で診断され、 第一線の診断検査である組織培養法に変わりつつあることのあらわれである。これにより、 ウイルスの血清型が分からなくなってきている。有益となる血清型情報を得るため、 髄膜炎患者からは糞便検体を採取して、 培養・血清型別を行うべきである。
1988年のMMRワクチン定期予防接種導入以前は、 ウイルス性髄膜炎の最も一般的な病原はムンプスウイルスであった。それ以来、 エンテロウイルス、 とりわけコクサッキーウイルスとエコーウイルスが主な原因となっている。ポリオウイルスも髄膜炎を引き起こすことが知られているが、 ワクチン接種の普及により、 現在ではごくまれである。エンテロウイルスによる髄膜炎は主に夏季に発生するが、 増加の程度は年ごとに変動し、 関係するエンテロウイルス自体による。2000年以前で最も最近起こった髄膜炎の大きな流行は、 1996年にみられたコクサッキーウイルスB5型の増加によるものであった。
(CDSC、 CDR、 11、 No.35、 2001)