2001(平成13)年5月と6月に、 堺市内において生レバ−が原因食品と思われる腸管出血性大腸菌O157食中毒がみられたので、 その概要について報告する。
事例1:5月16日に市内某小児科より、 9歳・女児の腸管出血性大腸菌O157(以下O157)感染症発生届があった。保健所による聞き取り調査の結果、 5月8日夕食に家族5名、 うち4名が生レバ−を自宅にて喫食したことが判明した。5月10日喫食者4名が軽い下痢症を呈し、 うち小児1名が血便、 腹痛、 発熱のため小児科を受診、 9歳の女児よりO157(VT1&VT2)とカンピロバクタ−が検出された。
5月17日同一ロットの生レバ−が食肉店より提供され、 細菌学的検査の結果、 O157(VT1&VT2)およびCampylobacter jejuni が検出された。
事例2:6月8日に市内某診療所より、 4歳・女児のO157感染症発生届があり、 保健所による聞き取り調査が実施された。その結果、 5月26日市内某居酒屋にて家族4名が喫食し、 当該女児のみが生レバ−を喫食した。5月31日患児が水様性下痢、 腹痛を訴え、 6月2日某診療所を受診、 O157(VT1&VT2)が検出された。
一方、 大阪府下でも6月6日に10歳女児とその父親よりO157(VT1&VT2)感染例の届出があり、 聞き取り調査の結果、 5月26日前記と同じ堺市内居酒屋にて同じく生レバ−を喫食していることが判明した。
上記2事例についてABPC、 CTX、 KM、 GM、 SM、 TC、 CP、 CPFX、 NA、 NFLX、 FOM、 STの各薬剤を用いて薬剤感受性試験(KB法)、 プラスミドプロファイル、 制限酵素Xba Iの処理によるパルスフィ−ルド・ゲル電気泳動法(PFGE)にて細菌学的解析を行った。その結果、 事例1における患者分離株と生レバ−分離株の薬剤感受性パタ−ンはすべて一致し、 プラスミドプロファイルでは、 両株ともに90kbを保有する型であり、 PFGEについても同一のDNAパタ−ンを示した(図1)。
事例2における堺市内患者分離株と大阪府下発生患者分離株についても、 分離株の薬剤感受性パタ−ンは一致した。またプラスミドプロファイルでは、 すべてが90kbを保有する型であった。さらにPFGEは同一のパタ−ンを示し、 本事例は居酒屋にて喫食した共通食品である生レバ−を原因食とする食中毒と判明した(図2)。
事例1と事例2の分離株についての細菌学的解析を比較すると、 薬剤感受性およびプラスミドプロファイルは同一パタ−ンを示したが、 PFGEのDNAパタ−ンが異なっており、 両事例の関連性は乏しいと判断した。
近年、 O157感染症の散発事例が増加し、 その聞き取り調査において生レバ−等の喫食が報告されているが、 今回の散発例においても事例1で生レバ−より本菌が検出された。生レバ−の生食がO157感染症に関与していたと思われる。
堺市衛生研究所
大中隆史 横田正春 石津真理子 山内昌弘 中村 武 田中智之
堺市保健所 山北太郎 木口雅行 岡澤昭子