男性同性愛者間でのA型肝炎の流行、 2000年−フランス・パリ

(Vol.23 p 19-20)

2000年6月、 フランス衛生院に対して複数の医療機関からA型肝炎例が報告され、 感染経路と予防策を探るための調査が始められた。

症例定義を2000年5月以降にIgM HAV抗体陽性でパリで治療を受けた患者とし、 4研究所とRothschild病院から、 IgM 抗HAV陽性で診断された患者の年齢、 性、 検体採取日、 診断医師名を入手。臨床症状、 HIV検査、 HAVワクチンの接種歴、 発症前6週間の危険因子(HAV陽性者との接触、 HAV汚染地域への旅行、 海産物摂食歴、 性行動)の有無を質問用紙で調査した。

その結果、 77例が報告され、 14例が調査された。平均年齢32歳、 11名がHIV感染者、 うち9名が抗レトロウイルス剤治療を受けていた。A型肝炎患者との接触歴有り1名、 HAV汚染地区への旅行歴有り1人、 海産物摂取歴有り5名であった。10名が同性愛性交パーティーに参加しており、 6名が集団性交を行った。12例の6週間前の平均性交人数は4人であった。フランスはA型肝炎のサーベイランスを行っていないため、 事例が明らかに増加しているといえるか難しいが、 同時期に複数医療機関から報告があり、 研究所への症例報告が増えたことは、 パリでの同時期の流行を示唆した。

今回の調査では、 外国で報告された男性同性愛者のA型肝炎と同様の危険因子(不特定多数との性交渉など)があげられた。外国での事例報告から男性同性愛者がA型肝炎感染のハイリスク集団とは言い切れないが、 この集団でA型肝炎は流行しうるし、 その報告もある。また、 HIV感染者のA型肝炎は重症化しやすく、 抗レトロウイルス治療が中断されることも問題となる。米国では1995年から男性同性愛者に対するA型肝炎ワクチン接種が勧められている。フランスでも、 男性同性愛者と、 不特定多数との異性間交渉をする集団へのHAVワクチン推奨について議論されている。

(Eurosurveillance Weekly、 No.46、 2001)

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp


ホームへ戻る