佐賀県T市の保育園において、 腸管出血性大腸菌(以下EHEC) O26による集団感染が発生した。2001年8月、 患者(女児・5歳)発生届出があり、 管轄保健所は患者家族と親類11名、 患者が通園している保育園児61名、 保母10名および患者・保菌者の家族59名、 合計141名の検査を実施した。その結果、 保育園児24名(うち有症状者2名)、 患者と保菌者の家族9名(うち有症状者1名)計33名からEHEC O26を分離した。
保育園は年齢別に4クラスに分かれており、 クラス別陽性者は、 0〜1歳児クラス:10名中3名(30%)、 2歳児クラス:25名中7名(28%)、 3歳児クラス:16名中6名(38%)、 4〜5歳児クラス:11名中8名(73%)であった。原因究明のため、 発症前日までの9日分の検食と患者宅の冷蔵庫内の食材およびふきとり検査を行ったが、 いずれの検体からも原因菌は検出されなかった。当時、 保育園では毎日、 ビニールプールを使用しており、 0〜1歳児と2歳児はクラスごと、 3歳児と4〜5歳児クラスは同じビニールプールを使用していた。また、 帰宅時間が遅くなるとひとつの部屋に集合させるため、 おもちゃなどを介して感染したのではないかということも考えられる。
上記陽性菌株のうち30株の性状は、 O26:H11 17株、 O26:HUT 13株で、 すべてVT1産生(PCR法およびRPLA法)であった。また、 パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)の結果はすべて同一パターンであった。
患者と保菌者はホスホマイシン等の投薬をうけており、 投薬後48〜72時間の検査では全員が陰性であった。さらに、 EHECの潜伏期が2〜9日であることを考慮して、 1回目の検査で陰性であった園児とその家族について、 初発患者発生から11日後に再検査を行った。その結果、 3名の園児(0歳、 1歳および3歳)とそのうちの家族1人からEHEC O26が検出された。菌陽性者に対してはそのつど、 保健所が二次感染予防の指導を行った。
EHEC O26の集団感染は他県の事例(本月報Vol.21、 No.1参照)にあるように、 終息するまで80日程度かかったケースもみられるが、 本県では2000年12月に発生した事例においても投薬後検査および職員の再検査を実施し、 28日間で終息している。今回も同じ保健所管内で発生し、 1回目の検査で陰性であった園児とその家族の再検査を行うことによって、 26日間で終息をみることができた。指導による二次感染予防の徹底と追加検査の重要性を再確認させられる事例であった。
佐賀県衛生薬業センター 増本喜美子 森屋一雄 隈元星子 下平裕之
佐賀県杵藤保健所・健康推進課保健予防係、 検査室
国立感染症研究所 寺嶋 淳