2001年2月16日、 幼児(0歳)が腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症を呈した旨の報告が亀岡保健所に入った(表)。電話での家族と保育所への聞き取り調査の結果、 家族と他の園児等に有症者または欠席者が無かったため、 単発事例として対応を行った。しかし、 1週間後の23日に、 同じ保育園の園児1名がEHEC感染症を呈したという医療機関からの届出が保健所に入った。
そのため、 当日緊急に園長等を含め対策会議を開催し、 園児、 保母と家族の健康調査と有症者の検便をすることとした。
27日から開始した検査の結果、 有症の園児3名からEHEC O26 Stx1が検出された。家族、 保母からは検出されなかった。そこで、 保育園内の集団感染と判明したため、 3月1日に2回目の対策会議を開催し、 有症者以外の園児の検便と保育園厨房のふきとり調査、 施設の消毒そして、 医師会等への有症者に対する検査や治療についての協力依頼を行うこととした。
検査の結果、 下痢等の症状を呈していない園児233名中12名からもO26 Stx1が検出された。また、 ふきとり調査からはO26は検出されなかった。そこで、 O26を保菌している園児の家族の検便を実施するとともに、 亀岡市医師会、 市保健健康部局を含めたEHEC感染症対策会議を開催し、 今後の対応を検討し、 保菌者については医療機関受診を指導した。結果として、 保菌者全員にホスホマイシン投与がなされた。なお、 家族からはO26は検出されなかった。
さらに、 3月12日から2回目の保菌者を除いた園児を対象とした検便検査を実施したところ、 全員陰性であった。
これらの結果を受け、 3月23日に3回目の対策会議を実施し、 陽性者についての追跡調査と今後の施設内感染予防対策を決定した。
ホスホマイシン投与を受けた17名の保菌者は全員陰性化したが、 4月9日から再検査を開始したところ、 2名に再陽性化が判明したため、 主治医に治療への協力を依頼した。ニューキノロン薬による再治療後の5月8日に再々検査を行ったところ、 2名とも陰性となり、 今回の患者・感染者合計17名を出した集団感染が終息したものと判断した。
そして、 5月30日に亀岡市と協同で公私立保育所衛生管理研修を実施し、 この事件が終結した。
なお、 ふきとり調査や聞き取り調査などの疫学調査からは、 今回の原因については把握できなかった。
分離された菌株について、 ABPC、 CTX、 KM、 GM、 SM、 TC、 CP、 CPFX、 FOM、 TMP、 NA、 STの12種についてセンシディスクを用いたKB法による薬剤感受性試験を実施したところ、 すべてABPC、 KM、 SM、 TCの4剤に対して耐性を示した多剤耐性菌であった。
なお、 分離された菌のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)の結果を図に示したが、 すべて同一の泳動パタ−ンを示し、 長期保菌者(図中番号6と8、 7と9)についても同じ結果であったことから、 すべて同一感染源のO26を保菌していたことが確認できた。 PFGEについてご指導いただきました大阪府立公衆衛生研究所の田口先生にお礼申し上げます。
京都府亀岡保健所
横田昇平 徳田幸一 若松久雄 森崎保明 茂籠 哲 中西淳子 海老瀬博子
古塩幸子 廣野正子 丹治和美 山下美佳 太田義博 松本秀司 森本芳弘 浦松敬宏
京都府福知山保健所 安藤明典 河野通大
京都府保健環境研究所 田口 寛 浅井紀夫 藤原恵子 降井佐太郎 前田知穂