社内会議用弁当にて発生したノ−ウォ−ク様ウイルスによる食中毒事例−徳島県

(Vol.23 p 12-12)

概要および疫学調査:2001年11月2日、 徳島県阿南市内の医師より、 食中毒症状を呈している患者を診察し、 この患者の職場でも多くの職員が同様の症状を訴えている模様と、 阿南保健所に連絡が入った。同保健所による調査の結果、 この患者が勤務する阿南市内の事業所にて、 職員23名が下痢・嘔吐など食中毒症状を呈していることが判明した。また発症者の共通食として、 社内食堂および10月30日夕刻の社内会議に出された弁当があげられたが、 一部の職員が弁当を持ち帰り、 それを食した職員の家族も発症していることより、 この同市内の飲食店で調理、 配達された弁当が原因食として推定された。

喫食者数42名のうち24名が発症(57%)し、 潜伏時間は13〜51.5時間(平均34.2時間)であった。発症者の主な臨床症状は、 嘔気・嘔吐19名(79%)、 下痢18名(75%)、 腹痛13名(54%)などであり、 発熱も17名(71%)に見られた。

対象及び方法:検査対象は、 11月2〜6日にかけて採取された喫食者糞便18検体(有症13名、 健康5名)および調理従事者糞便3検体(有症1名,健康2名)で、 食材は採取することができなかった。検査方法は、 ノ−ウォ−ク様ウイルス(NLV)の検索はRT−PCR法(プライマ−:NV81/82,SM82、 Yuri22F/R、 SR33/48,50,52、 SR33/46)を実施し、 陽性検体についてドットハイブリダイゼ−ション(プロ−ブ:Andoら,J.Clin.Microbiol.,33,1995)にて確認検査を行った。またロタウイルス、 アデノウイルスの検出については市販のラテックス凝集法(第一化学)を使用し、 同時に一般食中毒細菌検査も実施した。

結果:喫食者糞便18検体中10検体(有症9、 健康1)から、 調理従事者糞便については3検体すべての計13検体からRT−PCR法にて陽性バンドが認められた。そして確認試験であるドットハイブリダイゼ−ションでは13検体すべてがP1Aプロ−ブとのみ反応し、 genogroup(G)I型に属するNLVと確認された。またロタウイルス、 アデノウイルスは全検体陰性、 一般食中毒細菌検査でも特定の細菌は検出されなかった。

まとめ:喫食者および調理従事者糞便からNLVが検出され、 他に食中毒起因微生物は検出されず、 本食中毒事例はNLVが原因と断定された。また、 NLV由来の食中毒事例の原因としてカキなどの二枚貝が多く報告されているが、 本事例の推定原因食に二枚貝は含まれていない。しかし、 調理従事者および発症者糞便から同じ遺伝子型に属するNLVが検出され、 調理施設での聞き取り調査にて、 調理従事者の一人が推定原因食調理時に、 嘔気などの症状を訴えていたこと等より、 本事例の原因として、 調理従事者から食品への汚染が原因であったと強く疑われた。

従来、 国内で発生する胃腸炎事例から検出されるNLVは、 GII型が多く報告されてきたが、 近年、 GI型NLVによる報告例も見られるようになってきた。徳島県においても同様の傾向が見られ、 本事例から検出されたNLVはすべてGI型に属していた。今後報告されるNLVのgenogroupの変化に注目したい。

徳島県保健環境センタ−
嶋田 啓司 山本 保男
徳島県阿南保健所
佐々木 啓司 久米田慶子 大久保 孝樹

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