幼稚園で発生した胃腸炎の集団事例からNLVを検出−岩手県

(Vol. 23 p 40-41)

岩手県南部のA幼稚園において胃腸炎症状を呈する患者が多数発生し、 ウイルス検査の結果、 患者からノーウォーク様ウイルス(NLV)が検出されたのでその概要を報告する。

A幼稚園は園児数117名、 職員数14名の施設で、 年長組2クラス、 年中組2クラス、 年少組2クラスの構成となっている。患者は2001(平成13)年11月29日〜12月1日に発生し、 園児のみ19名であった。発症日別の患者数は、 11月29日が最も多く12名、 11月30日が6名、 12月1日が1名であった。クラス別では年長組の1クラスで10名と多く発生したが、 すべてのクラスで患者が発生した。患者の症状は下痢症よりも嘔吐症の傾向が強く、 各症状の有症率は嘔吐95%、 嘔気32%、 下痢42%、 腹痛90%、 発熱53%、 頭痛53%であった。

患者の糞便および吐物について微生物学的検査を行った結果、 細菌検査では原因と考えられる病原体は検出されなかったが、 ウイルス検査において、 被験者6名のうち3名の糞便、 または吐物からNLVが、 1名の糞便からNLVと腸管アデノウイルスが検出された。なお、 RT-PCRによるNLV検出には、 電顕観察用試料の一部からグアニジン・塩化セシウム超遠心法によりRNAを抽出し、 Andoらのプライマー(J. Clin. Microbiol., 33, 1995)を用いて反応を行った。検出された4株のNLVは、 すべての株がgenogroup IIで、 PCR産物の塩基配列が等しい遺伝子的に同一の株であった。被験者1名は腸管アデノウイルスとの重複感染であったが、 被験者6名中4名から遺伝子的に同一のNLVが検出されたことから、 当該事例はNLVの集団発生と考えられた。

感染原因については、 当初食中毒が疑われたが、 A幼稚園では給食は実施しておらず、 市販の菓子や乳飲料等をおやつとして提供しているのみで、 提供されたおやつにも全患者に共通するものはなかった。そのため、 当該事例が食品や飲料水を介した感染であったのか、 または人から人への感染であったのか特定することはできなかった。

岩手県環境保健研究センター
齋藤幸一 佐藤直人 高橋朱実 佐藤 卓 熊谷 学 田澤光正
岩手県水沢保健所   駒井俊晃 多田幸信

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