名古屋市の集団かぜの初発は、 2001年11月30日、 中川区の幼稚園であった。6名からうがい液を採取しウイルス分離を行った。MDCK細胞3代では分離陰性、 HEp-2、 AC細胞で全員からアデノウイルス2型が分離された。次いで12月6日、 守山区の小学校の5年で学級閉鎖があった。8名のうがい液を採取し、 MDCK細胞、 HEp-2細胞でウイルス分離を行ったが、 分離陰性であった。5名についてペア血清のインフルエンザウイルスに対する抗体価を調べたところ、 有意な上昇はなかった。また、 12月6日中川区の小学校で、 3年、 5年、 6年の学級閉鎖、 10日、 同じ小学校の1年、 2年、 3年の学級閉鎖があったが、 ウイルス分離は行っていない。
12月17日、 中村区内の小学校(在籍者数434名、 12学級)の6年生で集団かぜによる学年閉鎖の措置がとられた。6年生は2クラスで、 1組は32/38名が罹患し、 14名が欠席した。2組は27/38名が罹患し、 18名が欠席した。主な症状は、 発熱(38℃〜40℃)、 鼻汁、 咳、 咽頭痛であった。
同一小学校で、 18日には、 5年生の学年閉鎖(1組:22/39名罹患・12名欠席、 2組:30/39名罹患・14名欠席)、 2年2組の学級閉鎖(16/28名罹患・10名欠席)、 19日には、 4年生の学年閉鎖(1組:26/38名罹患・14名欠席、 2組:25/37名罹患・13名欠席)、 1年2組の学級閉鎖(24/39名罹患・13名欠席)の措置がとられた。閉鎖の措置がとられなかった3年生の罹患者数は、 17日が24/71名(6名欠席)、 18日38名(8名欠席)、 19日38名(13名欠席)で、 ほぼ全校に及んでいた。
6年生の患者10名のうがい液を採取し、 MDCK細胞を用いてウイルス分離を実施した。初代で6名から、 2代で2名からB型インフルエンザウイルスが分離された。
これらのウイルス株は、 HA価は8〜128であった。国立感染症研究所から分与された2001/02シーズンのフェレット感染抗血清のB/Akita(秋田)/27/2001に対してHI価20〜40(ホモ価160)、 B/Johannesburg/5/99に対してHI価10〜20(ホモ価640)を示した。
また、 この患者10名中7名のペア血清と1名の急性期血清のHI抗体価の測定を行った(表)。血清が得られた8名からは、 すべてB型インフルエンザウイルスを分離している。抗原は、 ワクチン株A/New Caledonia/20/99、 A/Panama/2007/99、 B/Johannesburg/5/99(デンカ生研製)、 B/Akita/27/2001(国立感染症研究所分与)、 この集団かぜの分離株B/Nagoya(名古屋)/24/2001を使用した。A/New Caledonia/20/99(H1N1)に対しては有意な上昇はなく、 抗体価は、 1名が<10、 7名が20〜320であった。A/Panama/2007/99(H3N2)に対しても有意上昇はなく、 抗体価10〜160であった。B/Johannesburg/5/99に対しては、 7名とも4倍以上の抗体価上昇を示した。急性期血清の抗体価は1名は<10であったが、 7名は10〜80であった。B/Nagoya/24/2001に対しては、 6名は4倍以上の抗体価上昇を示したが、 1名は回復期血清の抗体価は10であった。急性期血清の抗体価は8名とも<10であった。B/Akita/27/2001に対しては、 急性期血清の抗体価は8名とも<10、 回復期血清でも4名が10に上昇しただけであった。
感染症発生動向調査病原体定点の検体からは、 12月13日採取の5歳の肺炎患者の咽頭ぬぐい液から、 集団かぜの分離株に抗原性が近いB型が1株分離されただけである。
2002年1月15日から、 再び集団かぜが発生しているが、 名古屋市では、 集団かぜの検査は、 初発3例と、 その後の流行状況を考慮して行っている。その後のウイルス分離は行っていない。今後の動向に注目したい。
名古屋市衛生研究所微生物部 後藤則子 今井昌雄
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